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ムギが会いに来た。

年末30日に退院してから、
最初はレトルトのお粥と雑炊を食べたが、
病院で出された、全粥の、あのねっとりとした甘さが忘れられない。

レシピを調べて分量を知り、お友達にコツを教えてもらって、
今は、毎日自分が食べるお粥を炊いている。

一回に二食分できるので、毎日炊く。
わたしは、お粥が嫌いだったのに、
病院のお粥が本当に甘くてねっとりしていて、美味しくて、
それを再現したくて、毎回鍋で、生米から炊いている。

夫は、炊飯器で勝手に炊いてくれるだろうよ、
タイマー設定も出来るんだし、というが、
そうじゃないんだ。
わたしには、今、「お粥を作って食べる」という、その行為が必要なのだよ。
作っていて、毎日少しずつ仕上がりが違う。
あ、出来上がった、と思う時間も毎日違う。

実験のようで、とても楽しい。

コトコトとお粥を煮ながら、その横で他の煮物などをする。
この作業が、今のわたしに必要とされたことなのだ。

でも、徹底的に繊維質を排除した食事なので、
やはり、腸が動いているかどうか、お通じがあるかどうかが、心配の種である。
友人に聞いて、ガセリ菌のサプリを注文し、
オリゴ糖を買って来てミルクに入れて飲み、
昨日はお通じがあって、ホッとした。

今日、夕方前に、夫が部屋に来て、
手帳の、カレンダー部分やアドレス帳部分をはぎ取ったものを差し出し、
布張りの表紙が欲しいという。

わたしは厚紙を出して、寸法を計り、
表表紙・背表紙・裏表紙を一枚の厚紙で切り出し、
夫に布を選ばせてあげて、その布を貼り、
表紙・裏表紙の内側に織り込んで貼った布の端が見えないよう、
やや厚手の、マーメイドという紙で、封をした。

背表紙がしっかり貼り付くまで、一晩クリップで挟んだままにするように言って、
渡した。

夫が帰ろうとしたとき、
「わ。ムギがいるよ。」と言った。
わたしは、てっきり、ムギが庭先で、夫の帰りを待っているのだと思った。
そしたら、「違う、ここの階段に登って来てて、三段目か四段目に居るんだよ!」と言う。

わたしは、ちまを部屋に入れ、夫を押しのけて、
玄関から顔を出して、見てみた。

ムギが、階段の4段目くらいに、伏せをしていて、わたしを見た。

退院して来てから、夫が休みなので、ムギのことは夫に任せていた。
わたしとムギは、会うならば徹底的に、長く一緒に過ごす。
一時間では足りず、一時間半が普通で、
時には二時間コースの日もあるくらいだ。

だから、「適当にちょっとだけ会う」ということは、
ムギとわたしの間には、決して成立しない。
じっくり会えないのであれば、ゼロにするしかない。
なので、夫と戯れている、ムギの可愛い声を聞いて、
会いたいと思ってはいたが、
自分の体調もまだあやふやで、次の外来までは「患者生活」ですよと、
医者にきつく言われていたので、
ムギに会いに行っていなかったのだ。

そうしたら、ムギは、階段を登って、わたしに会いに来た。

玄関から顔を出してムギに声を掛けた。
逃げる気配はない。
ムギちゃん! そう呼ぶと、ムギはじっとわたしを見つめる。
「ムギ、ママに会いに来てくれたの?」
そう聞いてみると、ムギは「そうだよ!」と、鳴いた。
いろいろ質問してみたが、今一度、
「ムギ、ママに会いに来てくれたの?」と尋ねると、
やはり、その箇所だけに、返事をする。

「わかった、じゃあ、ママ、ムギのお部屋に会いに行くね。
お着換えしたらすぐに行くから、ムギ会ってくれる?
待っててね、いい? 待っててねムギ!」

ムギは、わたしが退院したことは、夫に聞いて知っている。
気配も匂いもわかっているはずだ。
いつまで経っても、自分に会いに来てくれないので、
ムギが自分から階段を登って来たのだ。

夫を帰し、わたしはトイレに行って、背中にカイロを貼り、
モコモコに着込んで、ムギに会いに行った。
12月26日に会って以来だ。

ムギは爪とぎに座っていて、
「ムギ、ママ会いに来たよ!」と言ったら、きゅう~ん、と鳴いた。
でもわたしが座ると、姿が消えた。

あれれ?
でも、呼びかけに応じて鳴くときは、会ってくれる合図なので、
待っていると、すぐにムギは戻って来た。
そして、当たり前のようにわたしの脚に乗って来た。
「ムギ、オシッコして来たの?」と聞いたら、そうだと言う。
久しぶりにムギの体を撫でて、
風が強くて寒いので、すぐにひざ掛けでくるんだ。

それで、ムギに、色々説明をした。
体調が読めなくて、会いに来れなかった。
でも、もうママ、良くなったと思うから、今日からは毎日来るね!

ムギ、もしかして、一昨日の夜、ママの玄関に、会いに来た?

わたしはムギに尋ねた。
宵の口に、玄関のドアが、不規則に、ゴン、ゴン、と何回か鳴ったのだ。

夫が何か作業をしに来たのか?と思ったが、そうではない。
ノックなら、コンコン!と素早く叩かれる。
不規則に、ゴン、ゴン、と数回鳴ったのだが、
わたしは出なかった。

ねえ、あれ、ムギだったの?
ムギがドアにゴッツンコしてたの?

そう尋ねると、ムギは、脚の上に向こう向きに乗っていたのだが、
わざわざ振り向いて、そうだよ、と言った。

ああ、ムギちゃん、ごめんよ、ママ気が付かなくて!
会いに来てくれてありがとうね…。


階段でわたしを待っている姿は、本当に切なくて、
胸がきゅう~っとした。
なのに、ゆっくり会うつもりで行ったのに、どうも不穏らしくて、
40分で、ムギは居なくなってしまった。

自分の体調も心配なので、カイロを交換して、餌を入れて、
帰って来たが、
案の定、ムギが敵と争っている声が聞こえ始めた。
いつもなら10分くらいで制圧できるのだが、
よく聞いていると、相手が二匹いるような感じがする。
わたしはテレビを消して、聞いていたが、叫び声の応酬が一向にやまない。
30分経ってもまだ、あ~おう~!と叫び合っている。

我慢できなくて、コートを羽織って、声がする方に行って、
「ムギ! 大丈夫?」と声を掛けた。
すると、人間が介入して来たのを嫌って、
奴らはいなくなり、声もしなくなった。


ムギの所に行かず、制作もせず、ちまを抱いて録画した番組を見ていたので、
ちまもすっかり甘えっ子モードに入ってしまい、
抱っこ抱っことせがむので、
全然制作に戻れない。

このあと、明日のお粥を炊かなくては。


ムギが会いに来てくれたのは、切なくて、愛おしかった。
愛してるだけじゃない、愛されてると、思った。

明日からも行くことにした。
大事な子たち。

                                           伽羅moon3

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