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ムギの「尊厳」。

前回の記事では、早ければ土曜日には退院かも、と書いたのに、
あのあと、ムギはすっかり元気をなくし、
しかも、外部調査の結果、予測した「急性膵炎」ではなかったことが、判明した。

え、じゃあ、それって、逆に難しくありません?と、
先生に聞いたら、そうなんですよ~、と困っていらした。

急性胃腸炎か、そうでなければ、腫瘍が疑われるけれども、
悪性腫瘍である可能性は低いので、じゃあいったい何なのか、と
わからずにいて、今は対処療法しか出来てない状態です、と
正直におっしゃった。

ムギは、入院して、初回の面会時は、えーんえーんと泣いた後、
甘えたし、おかかも食べてシーバも食べたのに、
担当のドクターが休みの日に行くと、
あきらかに元気がなく、熱っぽく、機嫌も悪く、やさぐれている。
少しでもわたしが体を離すと、「ふううぅん!」と、怒る。

そして、「そろそろ、処置があるので…」と看護師さんが連れに来たら、
ムギは鳴いて抵抗し、ペシャンコになってテーブルにしがみつき、
それを無理やりはがしたら、オシッコをちびってしまった。

ムギ、辛いんだね。
ママも辛いよ。
どこが悪いかわからなくなちゃって、治療法も見つからないんだよ…。

入院二日目が、一番辛かった。

金曜日には担当ドクターがいたので、聞くと、
ムギは、夜中、人が居なくなるとカリカリを食べているらしい。
オシッコも自力で出せるようになった。
でも、昼間は何も食べず、ウンちゃんも出ていないとのこと。

なので、もう少し様子を見ないとお返しできない状態ですと言われた。
それはもちろん、構わない。
とにかく、「ムギを捕まえる」ということが、一大ミッションで、
いかに悟られずにキャリーを準備し、平静を装って捕まえるかを、
考えるだけで、胃がキリキリする。
なので、一旦捕まえられたら、とことん検査して、治ってからの退院がいいのだ。

わたしは、用事をこなし、制作をし、
思いがけず、初回の出展で、委託が決まったのでその準備にも余念がなく、
ムギとの面会には少なくとも二時間を使うし、
だんだん消耗して来た。

土曜日、ドクターが、
「ムギちゃん、食欲出て来て、ウェットなら人前でも食べてるみたいです。」とのこと。
確かに、一番やさぐれてた木曜日より、はるかに機嫌がいい。
多分、担当ドクターは、いろいろやられちゃうから嫌なんだろうけれども、
でも、他のドクターを、ムギは信用していないのだとわかった。
「で、ウンコは出ましたか?」
そう、要はここなのだ。

急性胃腸炎だったとしても、それが治って来て食欲が出て来たとしても、
出るものが出ないと、回復はありえない。
わたしは、多分ムギは、今年の秋の相手と闘って、勝ったけれども、
かなり消耗してストレスも大きく、
それで、便秘をして、消化不良をおこしていたのではないかと思うのだ。
膵炎は、わたしも経験したが、激しい痛みを伴うので、
触ってもギャンとも言わず、触らせてくれたということは、
膵炎のよう激しい痛みではなかった、と考えるのが妥当ではないか。
だとしたら、あとは、排泄さえできれば、ぐっと楽になる、と思った。

わたしも出展で緊張して、三日間出なかった。苦しかった。
その後、出るようになったら止まらなくなり、寝込んだ。
そういう感じ?
なので、ドクターに聞いてみた。
「ウンコさえ出れば、かなり楽になるんじゃないでしょうか。
猫に浣腸とか、綿棒で刺激、とか、駄目なんですかね?」

すると、ドクターはこう言った。
「ムギちゃん、点滴の針を抜いてしまうので、点滴をやめて、カラーも包帯も外して、
静脈注射にしたんです。その方がストレスがないからです。
排泄はもちろん大事ですけれど、何か手を加えて、ムギちゃんにまたストレスがかかることを、僕は避けたいと思って、待っています。」

わたしは、自分を恥じ入った。

ムギは賢いので、上手に包帯をほどいて点滴の針を抜いてしまう。
それを、大きなエリザベスカラーを巻いて制限すると、
餌も食べられないし、水も飲めない、
だから、点滴をやめて注射に切り替えて、カラーを外してくれたのだ。
だから今日のムギは機嫌がいいのだ。
それなのに、手を加えて、無理やりウンちゃんを出させてしまったらいい、と
思ったわたしの身勝手さを恥じた。

排泄は、尊厳である。
認知症になっても、オムツを認めたくなくて、
何とか自力でトイレに行きたいと思うのは、
そこに人としての「尊厳」があるからだ。

ムギにだってその「尊厳」が存在する。
猫だけれども、特別、プライドの高い子だから、
そんなことをされたら、惨めで耐えがたいことになるだろう。
ドクターは、その、「ムギの尊厳」を、大事に考えてくださっているのだ。
いいドクターだ。出会えて良かった。

ドクターが去ってから、わたしはムギに、懇々と言い聞かせた。
「ムギ、ご飯食べられるようになって良かったね。あとはね、ウンコをしなさい。
ウンコちゃんするとね、お腹がすっごく楽になって、
そしたらムギ、治ってお家に帰れるよ?
夜中、誰も居なくなったら、こっそりウンちゃんしなさい。恥ずかしくないよ?」
そう、繰り返し繰り返し話し、
「ね、ムギ、わかった?」と尋ねたら、
ムギはシッポを、二回、パタパタと振った。


日曜日は面会はなし。
わたしはムギの小屋を、冬仕様に交換した。
他にも部屋でいろんなことをやって、
夕方委託店舗さんに行ってディスプレーして納品が終わった。

ちょっと高いお総菜屋さんで買い物をして、
ちまの世話をして、自分はシャワーして、
洗濯をして、先日買って来た金具類を仕分けして片づけ、
洗濯物を干してから遅い夕飯にした。
それから、しばらくパソコンに向かった後、
次の出展にどうしても必要なものを数点作ってから、
明け方、寝た。

そうしたら、気分が悪くて目が覚めた。
ムカムカする。
やばい!と思って、飛び起きてトイレに駆け込んだ。

こんな時のために、トイレにはヘアゴムが常備されてある。

しばし悶絶したあと、何回か吐いた。
液体のみだった。
朝の9時過ぎだったと思う。

流そうと思って見てみると、吐いた液体は、赤かった。

え…
トマトも食べてないのに?

出血したことを認めたくなくて、そのまま流して、ベッドに戻った。
ウトウト眠りながら、夢を見て、
夢の中でも何回も気を失う夢を見ていた。

起きて、ムギの所に行かなくちゃ…。

しんどい。
疲れた。
でも全部自分由来。だから何の文句もない。

今日は病院が空いていた。
すぐにムギに会わせてもらえた。
ムギは落ち着いていて、ゆったりとしていた。
ドクターが来て、こう言った。
「ムギちゃん、もう人前でもご飯食べてますし、元気になりました。」
わたしは食い気味に聞いた。それで、ウンコは、出ましたか?

ムギ、昨日、出たそうだ。
シッポをパタパタさせて「わかったよ。」と言っていたが、
誰も来ず、処置もない日曜日に、ウンちゃん、出たんだ。
ああ~、もうこれで大丈夫ですね!

今日はわたしが行けるのが5時過ぎだったので、
連れて帰って夜に外に放すのは怖く、
明日の午前中に迎えに来て、昼間、放してやる。
ムギは帰って来ると、とにかく急いでパトロールに行くので、
気の済むまでパトロールし、夕方帰って来てもらい、会えたらいいな。

ムギに疑われて、また捕まる?と思われたらどうしよう。
信用、失っちゃたかな。
でも、毎日毎日、面会に行ったよ。

明日はムギを放したら、わたしはちまとお昼寝をしよう。

長い長い一週間だった。


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