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嬉しくて悲しい。

火曜日に、ムギは退院してきた。
もうすっかり元気で、人前でももりもり食べてますし、
排泄も大丈夫です、とお墨付きを頂いて帰って来た。

火曜日は小雨で寒かったので、
小屋のベッドを日曜日にドームベッドに替えて置いて良かった。
タクシーもすぐ拾えたし、ムギを、ムギのリビングに置いて、
封印しておいた小屋を開けて、
それから、キャリーをあけて、ムギを出させてやった。

ムギはキョロキョロと見回し、
それが自分の家であるとわかった途端、
ガレージのコンクリートの上で体をいっぱいに伸ばしてゴロンゴロンと転がり、
車のタイヤで派手に爪とぎをして、引っ掛かってしまって後ろに転び、
わたしが水を入れたりいろいろしていると、
寄って来て、「なんかくれ!」と鳴いた。

いつもはプイっとパトロールに出掛けてしまうので、あわてて、
箱の中に常備してあるおかかをあげると、
ムギは顔を突っ込んできてシャクシャク食べた。
そして器の水をゴクゴクという勢いで飲んだ。
いろいろ、我慢をしていたのだね。

そしてムギは庭をしみじみ眺め、
また戻って来たので、器に入れたばかりの餌を差し出したら、
顔を突っ込んで、ガツガツ食べた。

ああ、ムギちゃん、良かったねえ。
本当に元気になったねえ。
嬉しいな~、ムギが喜んでいる姿。

パトロールから帰って来たら、小屋で寝んねしなね。
あったかくしてあるからね。

やがてムギはパトロールに出掛けたので、わたしは部屋に戻り、
食事をして、ちまと一緒にお昼寝をした。

夕方、いつもの約束の時間に、ムギに会いに行った。
ムギは、いなかった。
小屋の中を見ると、餌は食べてあり、半分以下になっている。
ドームベッドが、なにやら気に入らないらしく、
潰して、その上に乗っていたらしい。
ドームが潰れてヘコになっていた。

呼びながら30分待ったが、ムギは現れなかった。
まさか、また敵と戦ってるんじゃ…?
不安に思いながらも、仕方がないので部屋に戻った。

制作をしていると、夫からメールが入った。
勝手口からふとのぞいたら、小屋にムギが入っていて、出て来た。
今、抱っこ中。とのこと。
ああ、良かった、元気だったんだ。
パパにも久しぶりに会えて嬉しいだろう。

そのあと、資源ごみをまとめるのに、母屋に行くと、
ムギは自分の爪とぎ台に座ってわたしを見ていた。
「ムギちゃん、ママ、夜中に会いに来るね」と声を掛けておいた。

そして、約束通り、夜中2時に会いに行った。
ムギの気配を感じた。
居るんだな、と思った。

けれど、小屋には入っておらず、車の下にも姿はなく、
いくら呼んでも、姿を現さない。

ムギ…
ママを避けてる?
それとも、敵がまだ居るの?

不安になりながらも20分、ずっと呼んでいたら、
物置小屋の下の隙間から、ムギが、にゅるん!と出て来た。
最初から、いたんだ。

わたしが来たのに気が付いて、物置小屋の下に、隠れたんだ。
そしてわたしを、試してたんだ。

ムギは爪とぎに座った。
手が届かない距離である。
「ムギ、隠れてたの? ママ、もうムギを捕まえないよ?」
「ムギ、病気だったから入院したんだよ? 治ったから帰って来たんだよ?
だからもう、病気にならない限り、捕まえないよ?」
「ムギ、ママを信じられないの? 怖くないよ?」
と、必死に説得して、ムギが、やっと、こわごわ、わたしに寄って来た。
そーっと片手を膝にかけたので、優しく抱き上げて、膝に乗せた。

「ムギ、ママを信じて? じゃあ、今は何もしないで、こうしてラブラブしてようね。」
風があり寒かったので、ムギにも小さい毛布を掛けてやり、トントンして、
もう大丈夫、捕まえないよ、と話して聞かせた。

やがてムギは座って、ゴッツンコしてきて「なにかくれ!」というので、
夫が夜にちゅーるをあげたと書いてあったので、シーバをあげたら、食べた。
そして、食べ終えると、いなくなってしまった。



今日はカウンセリングで、息せき切って帰って来た、ムギに会いに行った。
懐中電灯で照らしたら、ムギはちゃんと、爪とぎに座ってわたしを見つめていた。
「ムギちゃん! ママ、ムギに会いに来たよ!」
「ムギ、今支度するからちょっと待っててね。」
敷物を広げ、座椅子をセットして座ると、
もう、ムギの姿は、なかった。

物置小屋の下に、隠れたのだ。

ムギは、時間がわかる子なので、夜中には捕まえられないことを知っている。
だから夕べは渋々出て来て会ってくれた。
でも、夕方は、またママが捕まえるかもしれないと、怪しんでいるのだ。
会いたくて姿を見ていたくせに、
いざとなったら、隠れてしまった。

そこに居るのはわかっている。
わかっているから、ムギにずっと話しかけてた。
ムギ、ママもう捕まえないって言ったよね。どうして信じてくれないの?
ママ、毎日毎日、面会に行って、連れて帰って来たのもママだよね。
なのにどうして信じてもらえないの?
と、声を掛け続けていた。

そしたら、二階から、お姑さんが降りて来てしまって、
勝手口を開けられた。

お姑さんは、もう、わたしのことがわからない。
だから、いつも振り返らずに、知らん顔をしていると、
またドアが閉まって、明かりをつけたり消したり、鍵をガチャガチャやったりする。

でも、今夜は話しかけられてしまった。
「どちらさま?」
と聞かれて、名乗ってもわからないだろうなあと思いつつも、
フードを取って、振り返って、「伽羅子です。」と言ったら、
「あらそう。わたし、一人なのよ。寂しくて。」と言う。
「もうすぐ〇〇さん(夫の名前)が帰っていらっしゃいますよ。」
「そうお? あのね、わたし、寂しいのよ、一人なのよ、誰も居ないの。」
と、引き下がらない。
ますます、ムギが出て来ないじゃないか。

「みなさん、お仕事だから、誰もいないんですよ、
もうすぐ、あと20分で、〇〇さんが帰って来ますから。」
そう言っても、なかなかドアを閉めてくれない。
やっと閉めたと思ったら、中で明かりをつけたり消したり。

30分待っても、ムギは頑として、出て来てくれなかった。
そこにいるって、わかってるのに。
すごく悲しい。
信用されないって、こんなに悲しいんだね。
辛いよ。

「ムギ、じゃあママ帰るね。また夜中に来るから、その時は会ってね。」と言い残し、
餌を小屋に入れたら、
夫からメールで、auのなんとかの日で、チーズバーガーもらったから、
あげるよ、もうすぐ帰ると来たので、
勝手口の段差に、黙って腰かけて待っていた。

そしたら、ママが帰ったと思ったムギが、
物置小屋の下から、にゅるん!と出て来て、
わたしと顔が合った。
ムギはびっくりして、すぐに家の裏手に逃げた。

悲しいよ…。ムギを救うために、ママ、毎日必死だったのに…。

ちょうど夫が帰って来たので、事情を話し、
チーズバーガーをもらって、部屋に戻った。


信頼を築くのは、一歩一歩。
積み上げて行くしかない。
でも一瞬で崩れ去ってしまう。
また一歩一歩、会えない日を耐えて、積み上げて行くしかない。
仕方がない、仕方がないけれど、
ママは辛いよ。
ムギ、なんで信じてくれないの?

このあと、行くけれど、どうか会えますように。

                                         伽羅moon3

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