« 痛みは、ただ痛いだけ。 | トップページ | 家事はエンドレス。 »

ちまと話したい。

ムギは、猫の中でも霊性の高い猫なので、
話が通じる。
あの子は時間もわかっていて行動している。

ちまは、普通の、可愛い猫だ。
話し合うことは出来ない。

ちまは、3つの症状を抱えており、幾種類もの薬を飲んできたが、
そろそろ、方針を固めなくてはならなくなった。

まず、腎不全のステージ2.
これは、最優先で進行を止めておかなくてはならないもの。
即、命に関わるから。
なので、高価な飲み薬を2種類飲んで、
腎不全の子用の缶詰を、おやつ代わりに食べている。

それから、よく吐くこと。

そして、アレルギー持ちで、痒みが酷いらしく、
お腹は、ザリザリの舌で舐め壊して、つるっぱげ。毛が無い。
それだけならいいのだが、痒いらしくて、舐めすぎて、
血が出てカサブタになっている時もある。

当然、毛を舐めて飲み込むので、吐きやすくもなる。

それで、「免疫抑制剤」を使って、痒みを留めて、
毛も生やそう、という作戦に出た。
痒みに効く、少量で害が残らない程度の、ステロイドも併用。

確かに、毛は生えて、舐めている時間は減った。

けれど、だんだん、副作用が出てしまい、
免疫抑制剤を飲ませると、翌日から吐くようになってしまった。

薬をストップして様子を見ていたら、
二週間、止めている間、吐かなかったので、
ドクターと相談して、再開してみた。

それでもわたしは怖くて、規定量より少なめに与えた。

そしたら、ちまはまた吐いて、
三日間続けて吐いた。

もうダメだ、あの薬は与えたくない。

やめると、吐かない。
けれども、痒みは増したようで、一日中お腹や内ももを舐めて、
うっすら生えていたお腹の毛は、
またすっかりなくなって、ハゲになり、
中央あたりが一番痒いのか、赤くなってしまっている。


痒みは、最も辛い症状だとわたしは思っている。

痛みには、何らかの終わりがある。
でも、痒みは、エンドレスなのだ。
痒い間、何も考えられない。
何も出来ないし、気が狂いそうになる。

それが終わりなく、毎日続いているのだとしたら?



わたしが、鬱病を発症したとき、
まだ働いていた。
すごく好きな仕事だったので、辞めたくなかった。
けれども、鬱病ですとやっとわかってから、仕事に復帰するまで、
たった三週間しかなかった。

睡眠薬を数種類試して、効くのを探し、
薬を飲みながら仕事に行ったのだが、
本当に色々な症状が出て、すごく苦労した。

まず、「鉛様症状」というものがある。
手足が、鉛のように、重たくて、立っていられないし、
電車で自分のバッグを持っていられないのだ。
わたしはバッグを床に置いて、脚で挟んで、吊革につかまって何とか帰った。

帰り付いて、服を着替える。
冬場だったし、暖房がない職場だったので、分厚いタイツを履いていた。
それを脱いで、ブラジャーを外した瞬間から、
全身、火だるまのようにカーッ!と熱くなり、
猛烈な痒みが襲ってくるのだ。

血流が良くなると同時に、アレルゲン物質が全身に巡るのか、
仕組みは知らないけれども、鬱病の症状の一つに上げられてはいた。

痒さで気が狂いそうになる。
手が届くところは手で掻きむしり、
届かないところは、竹の孫の手で、血が出るまで掻きむしる。

全身、血だらけになって、やっと痒みが去って行くのだが、
その後一時間は、
何も考えられず、動けず、放心状態になる。

太宰治の短編小説にも、若い奥さんが体に湿疹が出来て痒くて泣く話があった。
彼女は、痒くて、醜くて辛いと泣く。
お医者に行って体を見せるのはまた恥ずかしいと泣く。
若い旦那は、「お医者を男と思っちゃいけねえ。」と慰め、
連れて行くと、何かの食あたりだろうということで、
何を書きたかったのかややわかりにくい小説なのに、
わたしはその話が好きだった。


痒みに終わりはなく、常に常に辛い。

ちまの、免疫用製剤を辞めるなら、
痒みがぶり返す。
ぶり返している。
「ねこじゃすり」を夫に買ってもらっておなかをさすってやるのだが、
ちまは、はっし!と手で挟んで、カジカジしてしまう。

どうしようね、ちま。
どうしてあげたらいいかね、ちま。

わたしはちまを抱いて泣いた。

ステロイドを増やせば、痒みは抑え込むことが出来る。
毛も生えるし、本人は楽になる。

けれども、ステロイドは、強力な毒でもある。
他の病変を隠してしまう。
だから、病気に気が付きにくくなる。

ステロイドを強くすれば、その副作用も強くなり、
寿命を縮めることにもなる。

だからこれまでの数年間、
毒にまではならない程度の、ステロイドを少量、
与え続けて来たのだ。

でももう、それで抑えられなくなった。
ちまは、毎日痒くて、一日中お腹を舐めている。


わたしは、一日でも、ちまに長生きしてもらいたい。
どんな姿でもいい、ただ生きていてくれればいいと、思う。
失いたくない。
ちまを失うなんて耐えられない。

けれど、それは、わたしのエゴだ。

ちまがどう考えているのか、それだけ、一回でいいから、
ちまと話し合いたい。

痒みを抑えてやって、一日快適にしてやって、
でも、20年生きられる昨今の猫事情なのに、15歳で死んでしまうかもしれない。

けれど、痒いばかりの20年に、ちまが耐えなくてはならない理由は?
それは、わたしのエゴ。

離れたくない。生きてて欲しい。長生きして欲しい。
でも、ちまが辛かったり、苦しいことを、望んではいない。

ステロイドを、増やそうか。
ちま。
そして痒いのを減らそうか。
そしたら、もっと、毎日が幸せ?
ちまは、長生きなんていいのか悪いのか、わからないよね。

今日も一日、ちまを抱いていた。
しっとりと重いちま。
可愛い可愛いちま。
あどけない、天使のちま。

もう9歳。
立派なオバチャン猫だ。
もうすぐわたしを追い越す。


長生きだけが、幸せではない。
長生きして欲しい。
そこで思考はぐるぐる回っている。

どうしようね、ちま。
痒いのは辛すぎるよね。
ママ、知ってるからわかるよ。
血が出るまでやらないと、気が済まないんだよね。

ドクターと相談して、薬を変えよう。
もう、免疫抑制剤は使わない。

ちまの生活の質を向上してやりたい。
20年、生きられなくても、痒いばかりの毎日は、可哀想すぎる。

毎日、幸せに、のほほんと生きててもらいたい。
ちまは、天使ちゃんなのだから。

                                           伽羅moon3

 いつもお読みくださり応援ありがとうございます。クリックお願いしますclover

|

« 痛みは、ただ痛いだけ。 | トップページ | 家事はエンドレス。 »