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10年間。

亡くなってしまったが、
大好きだったデヴィッド・ボウイの初期の頃の曲に、
「5years」という曲がある。
「5年間」という、そのままの邦題。

これは舞台はアメリカで、ある何でもない日に、
街頭テレビでニュースが流れ、
この地球が、あと5年で滅びることがわかった、と
アナウンサーが言う、というところから始まっている。

その男性アナウンサーが、泣きながら原稿を読んで伝えいる姿を見て、
それがデマではなく、真実なのだと人々は知り、
街は混乱する。

自分の子供を殴り始める母親、
神父の靴にキスをする人、
軍人は銃を構えてキャディラックを狙う。
すべての人を記憶に焼き付けよう、
背の高い人も、太った人も。

音楽は最初、ドラムとアコースティックギターだけで始まり、
段々と楽器が足されて、やがてストリングスが悲しみのメロディを奏でる。

ボウイは、淡々と静かに状況を歌う。
やがて、最後に、こう叫び出す。
「5年間。僕らにはもうそれしか残されていない。」
「5年間。それが僕たちに与えられた運命、なんということだ。」
「たった5年間。」
「5年間。」

そして楽器がどんどん引かれて行き、
ドラムだけになって、曲は終わる。

わたしがこれを聴いていたのは、中学生だった。
その頃の自分にとって、5年間とは、すごく長く感じた。

5年あれば、自分は何かになれる。
5年あれば、きっとやりたいことができる。
心構えも出来て、
地球の滅亡を受け入れるだろう。

そう思っていた。


時間とは、均等には進まない。

なぜだろう?

小学生の夏休みが、あんなに長かったのに、
40歳を過ぎると、1か月なんてあっという間で、
いまの年ごろになると、もう、去年のことか一昨年のことかも、
わからなくなる。

たった5年は、短いと、思うようになる。
ほんの一瞬だ。

わたしはあとどれくらい、何かをやれるのだろうか。


5月17日は、わたしと夫が再婚して、10年目の結婚記念日だった。

10年だね、と以前言った時、夫は、
「別々に暮らしてて、接してる期間が短いんだから、別にめでたくもなし。」
みたいに、またすねた発言をした。

別居だから、10年もってるんだよ。
あの圧力とあのストーカー力で、ぴっとりくっつかれていたら、
とうの昔にわたしは滅んでいる。

だから、夫には、この生活をさせてくれていることへの感謝は大きい。

救ってくれて、かばってくれて、守ってくれて、
わたしは幸せである。
それには間違いない。

わたしが再婚しているからこそ、息子だって安心なんだし、
息子に対して、夫はすごく良くしてくれているので、
本当にありがたいと思っている。

息子の結婚式に、息子自身が望んだのだが、
父親として出席してくれて、本当にありがたかった。
片親というアンバランスを、見せずに済んだだけでも、
ありがたいことだった。
息子の選択は、とても正しかったのだ。

わたしは夫に、この10年のお礼のメールをし、
今後ともよろしくお願いいたします、と書いて送った。

すると、めずらしくまともなメールが返って来て、
「ハートマークが付いてない。」とのこと。
もちろん、芯の部分で夫を愛していて、信じている。
なので、ハートマークをつけて、もう一度メールをした。

お互いに、体はずいぶんへこたれてきて、
夫は、働いて、家事をして、お姑さんの面倒を見ているから、
毎日ヘトヘトだ。
パワーのある人だと思う。
よく頑張っている。

わたしは、今始めたことが、人生の最後のプロジェクト。

体をいたわり合い、お互いがやりたいことをやり、
尊重し合えることが、一番望ましい。

尊重し合う、
それが最もいいことだ。

結婚した当時は、夫は、
集合体の、お互いの丸と丸が、ぴったり重なる人生を送りたがった。
自分が好きなアーティストのライブにわたしを連れまわし、
見たい芝居にわたしを連れて行き、
なんでも共有したがった。

布団も、離して敷くことは認められず、ピッタリくっつけられていて、
わたしが、そーっと、20センチくらい離しておくと、
次に見た時には、また、ピッタリくっつけられていた。

苦しかった。
苦しいって言えるまで、本当に苦しかった。

でももう、そういうことにはならないよう、
わたしはわたしの世界を持ち、夫には夫が好きな世界があり、
それを話し合って、へえ~、そうなんだね~って、
言い合える仲が一番好ましいと思う。

夫はともすれば、わたしを引き込もうとするので、
安易に、いいよと言わないことにしている。
キリがないし、足りるということがない人だからだ。

距離感。
そう、人間関係は、距離感がすべてなのだ。
どんな間柄でも、近すぎて相手が見えなくなるのは、良くない。
相手をコントロールしたいと思ってはいけない。

集合体の、丸と丸は、ちょっとだけ重なっていて、
その、重なっている部分を、一緒に楽しむ。
それが正解だと思う。

B'zの「ラブ・ファントム」という曲で、こういうセリフがある。
「欲しい心が成長しすぎて、気持ちいいと思ううちに、
少しのズレも許せない、セコイ人間になってたよ。」
この言葉の後、女性の声で、
「そしてわたしは潰される。」と、一言入っている。

それが本当に、よくわかった新婚生活だった。

10年を、長いと思うか、まだたかが10年と思うか、
それはのちにならないとわからないが、
10年かけて、整った、わたしと夫の夫婦としてのスタイルというものはある。
わたしは、それを気に入っている。

だから、心から、そのことに感謝しているのだ。

生きて来て、幸せだった経験が、ほぼないわたしにとって、
今が、人生で、
最も幸福だと、言い切れる。

夫のおかげだと思っている。
本当にありがとう。

                                         伽羅moon3

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