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こうして生きて行く。

わたしは、小さいころから、睡眠のコントロールが出来ない。

赤ちゃんの頃は、良く寝て、寝てばかりいて、
非常に手のかからない赤ん坊だったそうだ。

けれど、保育園児時代、わたしはもう、
睡眠については悩みがあった。

わたしの町では、なぜだかわからないが、
4歳児は保育園に行き、
5歳児は、小学校の付属幼稚園に入る習わしだった。

母親は、当時、ミシンで内職をしていたはずだが、
母親が働いていない家庭でも、
子供は一年間は保育園に入れた。

よその地方では知らないが、その町では、
お寺が、保育園を経営しており、
東にあった寺の保育園は東保育園で、
西にあった寺の保育園は、単純に、西保育園といった。

わたしは東保育園で、送りには母が行っていたが、
お迎えというものはなく、同じ方面に帰る子どもを、
先生が送って行った。

わたしは、保育園で、たびたび、お漏らしをした。

それは、お絵かきとかをやっていると、
いつ、中断してトイレに行けばいいのかわからず、
それ以前に、中断するということが、すごく苦手だったので、
お絵描きをしていると、いつも漏らしてしまうのだ。

しょっちゅう漏らすのだから、母も学習して、
替えのパンツを持たせてくれればいいのに、
わたしはその寺の娘の、大きなパンツを借りてはかされて、
帰ってくるたびに、母に、「またか。」と言われた。
そればかりか、よその子の親に、
うちの子またおもらしして、ミナヨちゃんのパンツ借りてたわ、と
言いふらすのだ。

思うに、中断することができないのは、
なんらかの発達障害だったのではないだろうかと思う。

保育園では、まずい給食と、吐きそうな脱脂粉乳が出た。
実際、みんなその脱脂粉乳には、よく吐いた。

そのあと、強制的に、お昼寝の時間がある。

講堂で一斉に子供たちが寝るのだが、
わたしは、いつも全然寝付けない。
他の子たちがすやすや眠っているので、身じろぎもせず横たわり、
やがて、ようやく眠りに入った頃に、
起きるための音楽が鳴り響くのだ。

寝付いたばかりで、その曲で叩き起こされるのだから、
わたしはその曲が大嫌いだった。

それが、「トルコ行進曲」であったことを、
小学校の高学年になって知ったが、
やはり、いやーな気持ちになり、今も聞いたら、嫌な気分になると思う。

そんな風に、小さいころから寝つきが悪かったのだ。

小学生になってもそれは治らず、
ある、決まったルーティーンをしないと、絶対に寝付けなかった。
朝起きることが、とても苦手だった。

唯一、自転車に乗れるようになった、中一になる春休みに、
朝、5時に起きて、ゴンを起こしてた。
ゴンは小屋に居て、寝ぼけまなこで出て来て、
それでも嬉しそうにニコニコする。

自転車の前カゴに、ゴンを乗せて、
中学校までの通学路を練習した。

わたしはずっと自転車に乗れず、
近所の親しかったおじさんがある日、わたしを乗せてグランドに行き、
さあ、乗って見ろと言ってわたしを乗せ、
はあはあ言いながら後ろを押して、
手を離すと、「いいからただ漕げ!」と叫んだ。

何年も親に練習させられたが、わたしは乗れるようにならず、
そのおじさんは、一瞬で、わたしを乗れるようにしてくれたのだった。

カゴに入れると、ゴンは暴れることもなく、
風を受けて、気持ちよさそうに、乗っていた。
ゴン。
あの時、二人で、幸せだったね。
たった三年しか一緒に居られなかったけど、
一生忘れないよ。


うつ病になって、治る人は、
うつ病になってしまったなにか明確な出来事や、
対人関係があって、
そこから抜け出せる人に限られると思う。

そうではなく、わたしのように、生まれ持ってうつ体質であるならば、
治ることは望めない。

このまま生きて行くだけのことだ。

前も向かないし、立ち上がって走り出すこともしない。
明るい未来もない。

でも、それでいい。
こんなわたしでも、子供を授かり、いい子に育って、
幸せな結婚をしてくれたのだから、
別にもう、これ以上、望むことはない。

この部屋で、愛おしい物たちに囲まれて、静かに生きて、
静かに死んでいく。
それだけのことだ。

それを後ろ向きだとは考えないし、
自分にはこれが合っている。

さあ立て、前を向け、歩き出せと言われても、
そんな芸当はできない。

前進するだけが人生ではない。
とどまっていることも、別にいいじゃないか。
わたしはそう思う。

だから一生、ゴンを思えば、泣くのだ。

                                              伽羅moon3

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