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サクラも生きてた。

木曜が、ドラッグストアのポイント3倍デーなので、
在庫がなくなった、洗濯用洗剤類、台所用・お風呂用洗剤、
洗口液、キッチンペーパー、ラップなどを買い込んで来た。

徒歩なので、液体を大量に買うと手がちぎれそうだ。
水曜日ほど熱くなかったので、救われた。

行く途中、線路のガード前の、細い道に、
キジトラ猫が、ちょこんと座っていた。
え?
ムギ?

ムギ! ムギなの?
と声を掛けてみたが、返事がない。
ちょこんと座ってこちらを見ているので、近寄ってみた。

ムギと全く同じ顔立ち。
すごく可愛いキジトラ。

でもそれは、ムギじゃなくて、サクラだった。

一回りちいちゃくて、すごい顔が可愛くて、
耳にカットした跡があって、それを桜猫と呼ぶらしいので、
わたしたち夫婦も、この子を「サクラ」と呼んでいた。

2年半前のお正月明けに、
この地域に、一斉に、ノラ猫が出現した。
合計、7匹。

サクラは、先鋒だ。
いわゆる、「美人局(つつもたせ)」の役割である。
飛び切り可愛らしくて、人懐っこいので、サクラに寄ってこられたら、
おそらく、誰でも、骨抜きにされる。

わたしが、実家に帰省していて、
家に帰って来た時、
夫が庭で、サクラに、だしを取ったあとの鰹節をやっていたのだ。
そう。夫は一撃でノックアウトされたのだ。

サクラは本当に可愛くて、お腹を見せて、きゅるきゅると甘える。
たまらん。
「ねえ、この子、避妊してあるし、飼おうよ。」と言って、
わたしが洗濯ネットを持って、降りてきたら、
サクラは、すすす~っといなくなってしまった。

それを、アパートの階段の下で、じーっと見ていた猫がいた。

それが、ムギであった。

翌日から、あのちいちゃい可愛いサクラではなく、
ムギが庭かガレージに居ついて、
夫が出るたびに、シャーッとは言いながらも、
近寄って来て、
手の届かない絶妙な距離で、お腹を見せ、
敵意はありません、餌をください、とねだるようになった。

そのあと、サクラは来ていない。
完全に、あれは作戦だったのだ。

ムギが三本足だとわかって、夫が、
「今日もあの三本足、来てたよ。」というので、
今日も、というか、ほぼほぼもう、庭にいついているので、
わたしは勝手に名前を付けて表現することにした。

だって、三本足、だなんて可哀想な呼び名だもの。
くしくも、わたしが実家で、三本足のゴンが死んだとき、
なぜわたしを、埋葬に連れて行かなかったのかと、
泣いて帰って来た後だったから、余計にだ。

長い名前をつけてもどうせ省略するので、
簡潔な名前がいい。
ごま。
まめ。
ムギ。

うん。「ムギ」がいい。枯れたキジトラの色合いが、
実った麦みたいでぴったりだと思い、
わたしは、姿を見かけるたびに、「ムギ!」と呼んだ。

ムギはすごく頭が良くて、すぐに状況を把握できる。
名前もすぐに覚えて、わたしにもだんだん懐いて、
3月に入るころには、わたしがアパートの玄関から呼ぶと、
庭の茂みの中から、ひょっこり顔を出して見上げ、
「ムギ、おいで!」と餌の袋を振ると、
勇気を振り絞って、階段を駆け上がってきてくれたものだ。

本当に可愛くて、いじらしくて、しかも3本脚なのに一生懸命生きてて、
わたしはムギにメロメロになり、
現在に至る。



ムギのほかに、サクラと、あとはマメと名付けたキジトラ。
ぶちのある白猫、黒白のハチワレ、茶トラ、サビ猫。
この7匹が、突然現れた猫の集団だった。

子猫が増えることはなかったので、
きちんと避妊・去勢されてある猫たちだと思われる。
ひそかに、そういう善行を行っていた人が、近所にいたのだろう。

その人が、亡くなったか、引っ越ししたか、
とにかく何かが起きて、一斉に野良になった。


そのあと、ムギが小屋暮らしになると、それをねたんで、
かつての仲間が、毎晩交代でムギを襲いに来て、
ムギは毎晩毎晩闘い続けて、
雪が降った後の2月の寒い夜に、
小屋の中で倒れていたのだ。

今思い返しても震える。
動けなくなっているムギ。
冷たい肉球。よだれでぐしょぐしょの顔。

朝まで待っていたら、死んでいました、と、
救急病院のドクターに言われた。
良かった、本当に良かった。
ムギを救えて本当に良かった。

春になるまで、ムギはお風呂場で静養させたが、
その間も、ノラ猫たちは、つるんで、ムギを探して歩いていた。


サクラとは、最初に会ったきり、遠目で、あれはサクラかな?
ぐらいにしか見てなかったので、
久しぶりにまじまじと観察した。

間違いない。
サクラは、ムギの妹だ。

顔立ちが、全く同じなのだ。

キジトラって、見分けがつきにくい。
全身、柄だし、全員、柄だし。
でも、マメというキジトラがムギのところに通って来ていて、
おこぼれを頂戴してたときに、
同じキジトラでもこんなに顔が違うんだ、とわかった。
マメは、顔のパーツが中心に寄っていて、可愛くないのである。

ムギは飛び切りの可愛さなんだとわかった。
そしてサクラは、一回り小さくて、顔が、ムギと見間違うほど同じ。
しっぽの縞模様の感じもまったく同じ。

話しかけたら、サクラが返事をしてくれたが、
声もムギと似ていた。
マメの声は違うし、鳴き方の特徴も、サクラはムギにそっくりだ。

そうか。
サクラ、ありがとうね。
ムギは、うちを選んでくれて、小屋で元気にしているよ。
たまには会うの?
サクラ、元気そうだね。可愛いね。

そう言うと、サクラは一声鳴いて、立ち上がって、
しっぽをピーンと立てたまま、通りに向かって歩き始めた。
道を隔てて、1ブロック先の家のガレージに入って行った。

首輪はされてないから、サクラは飼われていない。
でも、ちゃんと居場所があるようだ。
とても元気そうだった。
あの小悪魔ちゃんぶりだったら、
人間をだまして餌をもらうなんて、サクラには容易いことだろう。

サクラ!
元気でね!
長生きするんだよ!

後姿を見送りながら、声を掛けた。

サクラが生きてて良かった。
元気そうで良かったよ。

ムギ、時々会ってるのかなあ。
サクラになら、餌をわけてあげてもいいよ。

                                             伽羅moon3

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