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けなげなうちのコ。

ちまは、情緒の安定した猫だ。
だからわたしと一緒に暮らしていられる。

いつも機嫌が良くて、シッポがピンと立っている。
撫でたり、すぐそばで寝転んで話しかけたりすると、
ゴロゴロ言って喜んでくれる。

怒ったことはない。
不平不満を漏らすこともない。
文句も言わない。

その代わり、ご飯ちょうだい、以外は、あまり話しかけてこない。

それに比べると、ムギはまるで、人間の子供のようなのだ。

こちらの言葉を確実に理解している。
ちょっと待っててね、と言えば、ちゃんとじっと待っていてくれる。

わたしの帰りが遅くなり、会いに行くのが遅れると、
盛大に文句を言う。

普通のお喋りをしてくれる時もある。
何を言っているのかは解明できないが、喋ってるので、
「へえ~、そうだったの。ふんふん、そうなのね~。」と聞いてやる。

ムギは怒る。
撫ですぎると、「ンギャ!」と怒る。
写真を撮られるのもあまり好きじゃなくて、
調子に乗って何枚も撮っていると、
「もういいだろ!」と怒る。

「いや~ん。」と鳴く。
これは、本当に嫌な時に鳴くので、
よくお姑さんと、それで会話していた。



「食べたい。」時の声も、特殊なので、よくわかる。

ムギの声は、高くて丸みのある、すっごい可愛い声なのだが、
「食べたい。」時だけ、低く「にゃー。」と鳴く。

敵がいるんだよ、というときの鳴き方も、もうわかった。

線路の電線に鳥が止まっていると、
「カカカカ!」と鳴く。

ふてくされて、いじけて、シッポだけ見えるように隠れてみたり、
かと思うと、嬉しさが極まって地面でローリングする。

ムギは、本当に面白い子だ。



でも、わたしには、二匹を同時に飼うことは、無理だった。
自分が未熟すぎて、全然うまくやれず、
ムギが部屋にいる期間は、誰一人として、幸せではなかった。

ちまは、一生懸命頑張ってくれたのだが、
苦労をかけたせいで、真っ黒だった背中に、
一気に白髪が出てしまった。

ムギも、楽しそうにはしてなかった。
幸せそうじゃなかった。

わたしはノイローゼになった。



わたしは、子供とお年寄りが嫌いなので、
自分が子供を持つということを、特に考えもせずに、
結婚した。
すぐ、息子を授かった。
だから、産んで育てられたが、
よくよく考えたりしたら、わたしには子育ては無理!って、
尻込みしたかもしれない。

そもそも、自分に兄弟がいないので、
兄弟を、どう育てればいいのかがわからない。

でも、もし息子の下に子供ができたら、
「お兄ちゃんなんだからね!」と、たしなめることは絶対にすまい、
そのために、「お兄ちゃん」ではなくて、
お互いに名前で呼ばせ合おうと考えていた。

息子のガラスのハートを、いかに下の子から守れるか、
不安だった。

でも、二人目を授かることはなく、
夫婦仲が悪くなって、離婚を決めた。



ムギには、夕方と、夜中寝る前に会いに行っている。
夕方は大体家の庭かガレージか、せいぜいお隣くらいにいる。

夜中は、真冬は小屋にこもっていることが多かったが、
今は小屋には入っていない。
小屋の窓は開け放ち、パイル地のベッドを入れてあるが、
どこかもっと涼しい場所を知っているのだろう、
小屋に入っていることはない。


夕べ、夜中、会いに行ったがやっぱり留守だった。
このところ、ムギのテリトリーを悠々と横切っていく、
図太い憎らしいノラ猫がいるので、ムギは警備に忙しい。

それでも、2~3回呼べば帰ってきてくれていた。

けれど、夕べは呼んでも呼んでも帰って来ず、
諦めて、夫に報告メールを打っていたら、
ガサガサガサ、と音がしたので、裏の土手を見やると、
土手の草の中を、掻き分けて降りて来る猫が見えた。
「ムギ? ムギなの?」

もちろん、ムギだった。

どうやら今夜は、線路の向こう側で、戦っていたらしい。

ずっとわたしが呼び続けていたので、戦いを一時休戦して、
帰って来てくれたようだった。
わたしにくっつきながらも、目はずっと土手を見ている。
予断を許さない状況らしかった。

なので、
「ムギ、じゃあさ、敵がまた来ちゃう前に、栄養補給しようよ。」
と提案して、ちゅーるを見せた。
ムギは、低く「にゃー。」と鳴いて欲しがった。

急いで器に絞り出してやって、
どうぞ、と置いたら、嬉しそうに舐めた。

軽い見回りをしながら、何度も甘えて寄って来る。
甘えたいし、でも敵が向こう側にいるし、
ムギ、大変だね。

夕方、シーバをやらなかったので、シーバもやって、
愛情と気力のチャージも終了。

ムギ、ママ帰るね、と言ったら、
ムギが先に立って歩いて、門の外に出た。

アパートの角の柿の木で爪とぎをして、わたしを見つめる。
「ムギ、階段登って、上に来てみる?」
そう聞いたら、ムギはシュタッと降りて、
一声、「にゃ~!」と元気に鳴くと、
角を曲がって通りのほうに走って行った。


けなげなかわいい子。
頑張ってね、と声をかけた。

ムギは、毎日、頑張って生きている。
とても尊いと思う。

                                               伽羅moon3

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