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平たいプレゼント。

そのママ友さんとは、多分15年くらいは会ってない。

その間に、わたしは、付き合いだした人が逮捕され、
自己破産することになり、
拘置所に毎日通い、
裁判を経験して、
刑務所にも通った。

そしてうつ病を発症した。

それでもいいと言ってくれた夫と再婚した。

再婚して住んだ町が、
彼女が、東京に出て来て初めて住んだ町だった。
ご縁のある方なんだと思っていた。

それが今回、彼女が定年で、再雇用されて、
働き始めたのが、また、この町だったのだ。

長い通勤で、慣れるまで大変だったと思うが、
慣れて来た頃、駅前でわたしにばったり会ったりしないかと、
思い出すようになって、
勇気を出してメールをくれたのだ。

うつ病を患ったことぐらいは、伝えてあったが、
詳しい病状を話してもいないので、恐る恐る、メールくれたのだと思う。

ちょうど、もらった時期が良くて、
わたしも寝付けるようになり、死にたくなくなったので、
ああ、会いたい、また一緒にカラオケ行きたい!って、
すぐに思った。

ちょうど、パン屋のカフェでアイスコーヒーを飲んでたので、
すぐに返事をした。

思いがけず、まともな返事が来て、驚いたかもしれないが、
じゃあ会いましょう、予定をすり合わせましょう、となり、
トントンと会う日が決まった。

彼女は、半日休みを取ると言ってくれたので、
ランチするお店を探して予約し、
その日が来るのを楽しみに待った。

でも、この15年で、わたしは20キロも太り、
髪は染めてはいるが95%白髪。
化粧もしなくなり、髪は後ろで縛ってるだけ。
スカートもはかなくなり、チュニックにズボンという、
最も楽なスタイル。

当時は、髪を長くして綺麗にしていたし、
スカート履いていたし、
お化粧もきちんとしていた。

きっと風貌が変わりすぎていて、わからないと思い、
目立つ色のバッグを持って、それを知らせて、駅で待っていた。

人を待たせるのが嫌なので、早く行って立って待っていた。

彼女は、わたしのバッグの色を頼りに、背後から現れた。

わあ!、お久しぶり!
と言ったら、「何よ、そんなに変わってないわよ。」と
お世辞を言ってくれた。

彼女の方は、当時よりむしろ、綺麗にしていて、若々しく、
とても60歳には見えなかった。

ランチを予約した店に移動しながら、
どう?この町もすっかり変っちゃったでしょう?と話した。

わたしが嫁いで来たときは、まだ古い商店街が健在で、
古本屋さん、花屋さん、果物屋さん、蒲鉾屋さん、
履物屋さん、お肉屋さん、傘屋さんなどがあったのだ。

全部なくなっちゃって、どこにでもあるチエーン店ばかりになり、
風情はなくなった。

予約したイタリアンの店でパスタを食べながら、
フリードリンクなので、わたしはガバガバ水分を取った。

息子同士が同級生なので、
事前に、「もしご迷惑でなかったら、息子の結婚式の写真を、
見てもらえますか?」とメールしたら、
ぜひ見たいと言ってくださったので、アルバムを持参した。

それを見てもらったが、彼女はさーっと見て、
「いいわねえ、本当にうらやましいわ。」と言って、閉じた。
そして、「お嫁さんは、羨ましいだけだから、息子君だけの写真、
一枚くれる? 持って帰って、うちの子に見せるわ。」と言われたので、
和装で座敷に座っている写真を、一枚もらっていただいた。

彼女は、公務員だし、大きな持ち家もあって、
裕福だった。
わたしたちはよく、ごちそうにもなった。

息子さんは、当然のように大学に進み、
今は大企業で働いているそうだ。

でも、うちの子はダメよ、
大学も、推薦枠で楽して入ったから、受験乗り切ってなくて、
就職も全然活動しなくて、
大学4年の10月になっても、まだ決まってなかったんだから、とのこと。

でも大きい会社に採用が決まって、
ずっとそこに勤めているとのこと。
仕事が終われば帰って来て、
休みの日は、一日中家にいるのよ、彼女なんていないわ、と
嘆いていた。

息子たちは、今年32歳になる。
そろそろ結婚して欲しいと、思っているのだろう。
あたなの息子さんはいいわねえ、と言われたので、
逆に、何も話せなくなってしまった。

お嫁ちゃんがとても可愛くて、二人がすごく仲がいいのよ、とだけ、
話した。
そこでやめておいた。

彼女は、昨年、お兄様と、お母様を亡くされた。
お母さまは介護施設に入っていて、認知症がひどく、
独身だった長兄さんが、面倒を見てくれていたそうだが、
そのお兄さんが肺ガンで、先に亡くなってしまったそうだ。

お兄さんの余命を聞いて、兄弟姉妹でご実家に集まり、
いわゆる「汚宅」を整理したそうだ。

そうしたら、家はボロボロなのに、
ザクザクお金が出て来て、
うん千万、あったそうだ。

お兄さまとお母さまが続けて亡くなられてから、兄弟姉妹で、
相続したそうだが、
すごい金額が入ったわよ、と言っていた。

わたしは、自分の親とうまく行ってなくて、
でも一人っ子だから、葬式はわたしが出さなくてはならないし、
数年前に、やっと町にも互助会館みたいのが出来て、
そこには入会しているらしいんだけど、
わたしはもう、多分、帰省しないと思うから、
話し合えないんだよね、と相談した。

そしたら、地元に残ってる友達に相談してごらん、と言われた。
遠くから親戚が来るんだけど、どうしよう?と言ったら、
いまどきは、宿泊部屋を完備してるところも多いから、
友達に、調べてもらいなよ、とアドバイスしてもらった。

そうだね。
もう、親戚一同を、家に泊めるなんて、無理だから、
一度、しーちゃんに相談してみて、
その会館のこと、調べてもらおう。


それから電車に少し乗って、カラオケに行った。
彼女も歌が好きで、上手なのだ。
よく一緒にカラオケに行ったものだ。

わたしは、友達とカラオケ、というのが、すごく久しぶりなので、
嬉しかった。

3時間申し込んで、途中ちょっとお喋りしたりしたからだけど、
あっという間に時間が来てしまった。

名残惜しいけれど、彼女は、帰って炊事をしなくてはならない。
またいつでも声かけてよ、
半日休むくらい平気だからね、と言ってくれた。

そして、カラオケ代は払うと言ってくれた。

わたしは、そうやってずーっと甘えっぱなしで来てるから、と言ったが、
「いいのよ、わたし、すごい退職金も出たし、ボーナスも出たの。
遺産も相続したって言ったでしょ? だからいいの!」
そう言って、払ってくれた。

なんというか、「稼いでる。」とか、「お金あるから。」と言っても、
全然、嫌味がないのだ。
「男前」なのだ。
カラッとしていて、じゃあ甘えちゃおうかなあ~って、つい、甘えてしまう。

でも、彼女は昔から、そういう人だった。

彼女が頑張って働いて、もらったボーナスなのに、
わたしを豪華な食事に連れて行ってくれて、
カラオケにも行ってくれて、
いいのいいの、沢山稼いでるから!と笑ってる人なのだ。

だから、あらかじめ、プレゼントを用意していた。
こうなることを予想してたからだ。

会えると決まってから、悩んで悩んだ。、
まず、とにかく、仰々しいプレゼントだと、
受け取ってもらえない、とわかっている。

だから、「平たいもの」にしようと思った。
箱ものだと、恐縮されてしまうのはわかりきっている。

和物が好きだったら、手ぬぐいで出来たハンカチとか、とも考えたが、
洋風のコーヒーカップ&ソーサーを集めてる人だったので、
和物じゃないな、と考え直した。

きっとハンカチなんて、腐るほど持ってるだろうし。

お金持ちだから、何でも買えるし…
重複して持っていてもいいもので、
平たいもの…

そうだ、彼女は本を読む人だから、ブックカバーにしよう!
色は、グリーンが好きだから、
グリーン系の色で、ブックカバーを探した。

わたしは、自分が何冊か本を並行して読むので、
ブックカバーは3枚使っている。

きっと重複しても、嫌な感じは受けないだろうと思った。

北欧風で、ややくすんだグリーンのを見つけて買った。
薄い木で出来たしおりも買った。
わたしが作った、ストールピンも合わせて、
綺麗に包装し、今までと、今回のお礼を書いた手紙をつけた。

渡そうとしたら、「やだ、わたし何も用意してないわよ。」と言われたので、
平たいのをいいことに、
「違うの、手紙なの。手紙だから、帰ったら読んで。」と
懇願して受け取ってもらえた。

駅で別れて、しばらくすると、彼女からメールが来た。

電車に乗って、すぐに開封したらしい。
彼女は、通勤に、一時間半もかかるので、
スマホのゲームも疲れたし、本を買って読んでたんだけれど、
最近は職場の図書室の本を借りて読んでいるとのこと。

でも、本に、デカデカと職場のシールが貼られてるので、
それは隠したいし、
しおりも持ってなくて、レシートとかを適当に挟んでたそうだ。
何とかしたいな~と思っていたところだったので、
あまりにもタイムリーなプレゼントにびっくりです!と、
喜んでくれていた。

ああ~、良かったよ~。
何日も考えて、何店舗も回って選んだ甲斐があったよ。

使ってくださるみたいで、本当に良かった。
とても嬉しかった。


人間関係も、縮小しようと思っていたくせに、
幼なじみのヒロミちゃんと文通を始めたり、
こうしてカラオケ友達がまた出来たりと、
わたしの人生は、とても豊かだ。

周りの人に、すごく恵まれていると思う。
ありがたいことだ。

愚痴なんて言い出せばキリがないから、
楽しく付き合う仲間も、必要だね。
再会出来て、本当に良かった。

そして、息子が結婚出来て、
マンションも買って幸せに暮らしていることが、
どんなに恵まれているかが、よくわかった。

まだ話は続きます。

                                               伽羅moon3

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