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出会いは用意されてある。

人と人との巡り会いは、
本当に不思議なことが多い。

人格も生活も育ちも、何も知らないのに、
「一目惚れ」が起こるのは、
その出会いが、あらかじめ、用意されているものだからだ。

一目惚れ、という言葉が当てはまらないにせよ、
なんらかを、感じる相手って、実際に結構いるものだ。

それは、そこそこ、ご縁のある相手である。

出会いは、用意はされているが、それを生かすか無視するかは、
今生の選択による。

どちらがいいのかという、正解はないと思う。
それぞれの過程と結末がある。
それによって得る学びも、また変わって来る。


前夫とは、同じ会社で知り合った。
わたしは高卒で働いており、
前夫は、大卒で入社して来たので、
年は下だが、わたしのほうが先輩だった。

新入社員がまとまって廊下を歩いているのを見て、
ふと、前夫の顔に目が行った。

それはもしかしたら、好きなタイプの顔だったかもしれないが、
印象に残った。

その頃、わたしには、熱心に付き合いたいと言ってくれている男性がいた。
隣の職場の人で、家もわりとと近く、
3歳くらい年上だったと思う。

その人も高卒で働いていて、会社での評判は悪くなかった。
人柄も良くて、喋っていると、楽しいのは楽しいのだ。

でも、わたしは、恋人になることには、なにか、
抵抗があって、迷っていた。
返事もしないまま、たまに食事をしたり、
ちょっと飲みに行ったり、
ドライブして喋ったりするだけだったが、
あるとき、自分が持っている「違和感」の正体を知った。

わたしが、泣いていた時、こう言われたのだ。
「もう泣かないで。キミには涙なんて似合わない。笑って。」

その瞬間に、あ、この人とは、ダメだ、と悟った。


まず、恋人になったとしても、性的なことをする、予想が浮かばない。
人としては嫌いではないのだが、
男女の仲になることを、想像できないのだ。

それに、わたしに恋するあまり、性急で、
お姉さんの家に連れて行かれて、
すごい歓待されてしまった。
まだ小さい(一歳未満)の赤ちゃんがいたのだが、
3人は、その赤ちゃんをめぐってメロメロで、子供が大好き!という。

わたしは、赤ちゃんを触ったこともないし、
正直、子供とお年寄りは、嫌いだ。
なので、「可愛いでしょ! 赤ちゃん好きだよね?」とか言われても、
困る。
可愛くないし好きじゃないと、言えなかった。

そして、「キミには涙は似合わない。笑って。」と言われて、
ああ、この人とは無理なんだ、と理解した。


わたしは、非常に暗い人間である。
一人で何かをやっていることが好きだ。

親が泣くことを許してくれないので必死に耐え、
自分の部屋で、声を押し殺して泣いて生きているのに、
「笑って!」という人と、一緒に生きて行くことは無理、と
悟った。


それで、友達としてならいいけど、恋人にはなれない、と
返事をした。

そのあと、前夫と、付き合うようになった。

前夫は、わたしが泣いていると、黙って泣かせておいてくれた。
それで充分だった。

新入社員の群れの中で、ふと目が行ったのは、
結婚する相手だったからなのだ。

そしてそれは、単に、
息子を授かるためだけの、結婚であって、
他の意味はないのでもう考えなくていいと、
インド人のヒーラーさんに教えてもらった。


今の夫と初めて会った時も、わかった。

昼間から始まった飲み会の二次会で、
夫はもう、べろんべろんに酔っぱらっていた。
そうなると、どっしりと動かないタイプの人なのだ。

ところがその日、遠いテーブルに座っていながら、
わたしを見つめている視線に気が付き、
見ると、夫がわたしを見ていた。
わたしは、そのとき、こう感じた。
「こういう人って、わたしのことを好きになるんだよな~。」

上から目線だけれど、そう思った瞬間、
夫が立ち上がって、ヨロヨロしながらわたしのところに来た。

空いていた隣の席にどかっと座ると、
酔っぱらった目をして覗き込み、
「どうしてこんなところにいるの?」
と、聞かれたのだった。

どうして、って…。
わたしは別に、場違いな場所に居たわけではない。
いるべき場所に居たまでで、
初対面の人に、どうして?と聞かれても、答えようがない。

わたしは夫に名前を聞き、わたしも名乗り、
その後は、会う機会があれば、挨拶するようになった。

けれども、ベロベロに酔っていた夫には、
わたしのところに来て、話しかけた記憶が抜けている。

気になって、見ていたのは事実だと思う、と言っていた。


そのときは、わたしには、付き合ってる彼がいて、
その後、逮捕されてしまうのだけれども、
夫はわたしと付き合いたがっていた。
と言うよりも、最初から、結婚の話しかしなかった。

わたしにはそういうつもりはないから、
他にいい人を見つけなさいよ、応援するから、と
いつも言っていた。

でもそんなことが続いて、飲み会の席で、夫が、
明日、デートすることになった、今までアドバイスありがとう、と
一言言って、ガクッと首を垂れて、寝た。

そうなんだ、よかったじゃん!ってわたしは答えたのに、
悲しくなんてないのに、
夫は横で寝てしまっているのに、
わたしは隣で、ボロボロと涙を流していた。

何で泣くの?
なんでこんなに涙が出るの?
ストーキングされて、迷惑してたんじゃない。
喜んで送り出してあげたらいいだけじゃない?



わたしは、刑務所に通いながら、
激しい出血と戦いながら、
働きながら、
日々を生きていた。

やがてわたしの糸は切れ、
夫の庇護に入った。

そうして今の幸せな人生がある。



弁護士Zに初めて会った時も、不思議だった。

逮捕された人の弟さんが紹介してくれたのだが、
会うつもりがあったわけではなかった。
ただ、弁護士の電話番号を伝えたあと、
弟さんは、携帯電話を変えて、わたしから逃げた。

なので、一応、弁護士さんに電話だけでも、と思って、
翌日、拘置所の前で、電話をした。

あの時、なぜだか、ものすごい妨害電波が出ていて、
彼女の声が、途切れ途切れにしか聞こえなかった。

わたしが黙ると、ごうごうと音を立てる電波の向こうで、
「もしもーし! 聞いてるのー? もしもーし!」
と、必死に声を掛け続けてくれていることに、
何だかちょっと、心が動いた。
ちょっと会うくらい、会っておいた方がいいのかも、と思い、
職場に電話をして、今日は休むと伝えた。

一緒に活動してくれていた友人に、
弁護士に会ってみようかと思うけど、とメールすると、
一緒に行く、と言ってすぐに午後、休みを取ってくれて、
落ち合って、出向いた。

部屋に通されて、座って待っていると、
彼女が、さっそうと現れた。

その時、わたしは、ひどく動揺した。

ああ、同じ種族の人が来ちゃった、と、感じたのだ。

出来れば、こんなことになっちゃったことを、
知られたくなかった親戚が、来ちゃった、みたいな感じ。

うまく説明できないけれど、近しいがために、
嫌だなあと、いうのが、最初の印象だった。


そこでわたしが保証人にされているのは、
「腎臓売って金作って来い!」と言って誹謗を浴びた、
非常に悪徳な業者であって、今、あなたはとても危ない、
すぐに、自己破産の手続きに入る、
必要な金額は20万プラス30万で、無理なら分割でも、
と、サラサラ喋るので、
わたしは、「待ってください!」と制した。

その時、わたしには、別れるつもりなんてなかったし、
自己破産しようとして、来たわけじゃないし、
そもそも、50万なんて、たとえ分割でも払えるわけもない。

制しておいて、どうしたらいいかわからず、
わたしは下を向いて黙っていた。

あまりにも世間知らずで、非力だった。

そうしたら、一緒に行った友人が、
「お金はすぐに払えますから、手続きに入ってください。」と
言ったのだ。


そんなことになるまでは、ただの飲み友達だった。
まさか、お金を出してくれるだなんて、考えたことがなかった。

でも、彼のその一言で、即日手配がされ、
悪徳金融からの電話などは、すべて弁護士により、
制止されたのだ。


のちに、弁護士Zは、こう言った。

なぜだかわからないが、個人的にシンパシーを感じた。
あまりにも世間知らずで、弱弱しく、
これでは荒波を乗り越える力はないだろうから、
何とかしてあげないと、と、思ってくれたそうだ。

だから、本来は、わたしの自己破産だけを担当する弁護士だったのに、
色んな相談に乗ってくれ、
彼の裁判の時には、時間を都合して、傍聴しに来てくれたのだ。

判決の日にも、来てくれていた。
白いラメ入りのツィードのスーツを着ていた彼女は、
とても美しく、会話は明朗で、
わたしたちグループは、全員が彼女のファンになった。


こうして、周りの人たちの善意に救われ続けて、
今のわたしがある。

人とのご縁は、用意はされているが、
つかんで、育てるのは、自分の力なのだ。

感謝しながら生きて行くよ。

                                               伽羅moon3

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