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必要なルーティン。

わたしは、少女期から、不安が多く、
翌日を迎えることが、毎晩、怖かった。

でも、自分以外の友達がどうだったのか知らないし、
親にもうまく話せないし、
どうやってその不安や恐怖から逃れられるのかを、
いつも模索している子供だった。

毎晩、月を見に外に出て、
指を組み、月に祈りをささげた。

不得意なことがとても多く、しかもそれらのことを、
親に、叱咤されたり、馬鹿にされたりしていた。

走るのが遅いわたしを、日常的に母は、
「グズ」とか、「ビリ」と、呼んだ。

水が怖くて泳ぐどころか顔すらつけられない。
自転車に、どうすれば乗れるのかわからない。
最初は、後ろを押してくれていた両親も、
嫌になったのだろう、もう、練習させてくれなくなった。

テレビで、自転車のコマーシャルが流れるたびに、
わたしは、冷や汗をかいた。
責められるのが怖くてたまらなかった。

月に向かって、お願い事をする。
「自転車に乗れるようになりますように。」
「泳げるようになりますように。」
「早く走れるようになりますように。」
「明日、怒られませんように。」

布団には、キューピーちゃん人形を置き、
犬のぬいぐるみを置き、
その二人にも、お願い事をして、
キューピーちゃんと、ワンちゃんをキスさせてから寝るのが、
わたしの、ルーティンだった。
それをしないと、不安で寝られなかったのだ。

ある時、同じ町に住む、年下のいとこが来て、
夜になったのでわたしが自分の布団を敷き、
キューピーちゃんと、ワンちゃんを並べたら、
すごく馬鹿にされて、笑われた。

そこでわたしは、そのことが恥ずかしいことで、
みんなは、明日に対して不安なんて持たずに寝られるんだと知った。




今現在も、わたしは、自分のルーティンがある。
何時までにこれをやって、何時になったらムギのところに行き、
何時までテレビを見ていて良くて、
何時になったら、寝る支度を始めるか。

やる事柄の、順序が狂うのは気持ちが悪く、
イレギュラーに、予定外の用事が入るのも苦手。

時間には厳格で、
待ち合わせには必ず早めに行き、
出発時刻なども、決めたら、守らないと気持ちが悪い。

うつ病を発症してから、より顕著になった。





ムギも、「いつもの」ことに、非常にこだわる子だ。
イレギュラーを嫌がり、
手順を間違えると、たちまち機嫌を悪くする。

タイミングが、非常に重要。
しっかり観察して、何を欲しているのかを理解する。

ムギがいれば、いつものように座り、いつものように乗って来て、
体を拭いて、ブラッシングして、全身撫でて、
それから、まったりと過ごす。

充分に愛情をチャージしていない段階で、
こちらが、餌を出したりしたら、ムギは明確に、怒る。
今じゃないんだよ!ってね。

本人が、欲しい、と鳴くまで、わたしはあげない。
まずは愛情をチャージしてから、
その次が食べ物なのだ。



今日は夫が会社を休んでいた。
昼間、ムギと会えていたようで、それは良かった。

わたしはわたしで、カウンセリングの予定だったので、
そう伝えて、出かけた。

カウンセリングを終えて、デパ地下で、お弁当とパンを買い、
急いで帰って来た。

ムギには、夕べ会った時に、
「ママ、明日はお出かけだから、暗くなってから来るね。6時半に来るね。」
と、言い聞かせてあった。

相手は猫なので、どこまで、理解できるかはわからないが、
人間の子供の、一歳児くらいの理解力があるので、
ママが、明日は、いつもとは違うよってことを、
言ってるのかな?と思ってくれたらいい。

きちんと説明するのが、大人としての誠意だと思っている。




息子が小さいころ、色々疑問に思うことを、
質問してくる。
中には、その年齢では、まだ理解は難しいな、と
思える質問もある。

そういう時、わたしの母は、いつも背中を向けたまま、
「昔から、そうなっとるんや!」と、一蹴した。

それが嫌だったことを思い出し、
わたしはしゃがんで、息子と目線を合わせて、
わかろうが、わかるまいが、一応、説明をした。

それが誠意だと思ったからだ。

すると、息子は、理解は出来なくても、
親が目を合わせて、何やらまじめに説明をしてくれた、という、
その事実だけで、ある意味、満足をする。

でもまあ、タイプにもよるようで、
いくら、「ねえお母さん、これはなんでー?」と
しつこくしつこく聞いている子供を平気で無視しているママもいるし、
質問されたので、答えようとしても、
ちゃんと説明を聞くことなく、すぐ次の話題に行ってしまう子もいた。

だから、誰にでも通用する例ではないと知った。



ムギは少なくとも、しっかり話を聞いている。
だから説明をする。

カウンセリングから帰って来て、ちまの世話をして、
さあ、急いでシャワーして、ムギのところに、と思ったら、
夫がムギと会っていると、メールが来た。

わたしは、今からシャワーしてそのあと行くと答えた。

ムギは、夫にちょっとは甘えたが、
ハッとして、あれ、違う、と思ったらしく、
車の前に座って、門扉を見ていたそうだ。

わたしが帰って来た物音は聞いていただろうから、
ママ、まだかな、と、思ったのかもしれない。

そんなムギに、夫が、餌を出してしまったのだ。

ムギは、「今じゃないよ、違うんだよな。」って思ったと思う。
なんで6時台に、もう夜の餌をやっちゃうかな。

ムギは気分を害して、物置小屋の下にもぐったそうだ。



わたしが慌てて駆け付けたのだが、
ムギはもう、物置小屋の下にはいなかったらしい。
呼んでも、呼んでも、帰って来てくれない。

こんなに急いで帰って来たのに。
ムギといつものことをしたくて、小走りで帰って来たのに。

わたしは心底がっかりした。

ルーティンが狂った。



暖かくなったので、ムギの小屋の、真冬仕様を、少し解除した。
暖房のマットを、温度が低い面にひっくり返し、
ドームベッドにかけていた、フリースのひざ掛けを取った。

帰って来てくれないので、仕方なく部屋に戻ったが、
イライラした。
多分、ムギもそうだと思う。
もう夜中まで行かないから、あとはよろしくね、と、
夫にメールした。


10時に、夫からメールがあり、
今のぞいたら、ムギいるけど、どうする?と聞かれたので、
すぐに行った。

ムギは待ち構えていて、ムギから声を掛けて来てくれた。

爪とぎの座面に座っており、わたしを見て、
さんざん、文句を言う。

そうだよね、ムギ、そうだね。うんうん。
会いたかったよね。

ムギは文句を言い終わると、
コンクリで、ゴロンゴロンとローリングしてから、
まっすぐわたしに向かって来て、こちら向きで乗った。

ずっとゴロゴロ、喉が鳴っている。
わたしを見上げて、ニコニコする。
ムギちゃん。ムギちゃん。
会いたかったよね。約束してたんだもんね。

ムギは、いつものようにして欲しいと言った。

なので、毎日、夕方しているように、
体を拭いて、お腹ちゃんも触って、
ブラッシングして、全身を撫でて、
いっぱい、いい子いい子した。

おかかだって食べるもん、と言う。
食べ終わると、また乗る。
夫が、小屋にカリカリを入れてあるのだが、
ボクはシーバ食べるんだもん、と言うので、
シーバも手からあげた。

珍しく、わたしの脚に不安定に座って、
ゴッツンコをしてきた。
顔の下に手を置いて、アゴを乗せさせていたら、
その手を、ぺろぺろと舐めてくれた。

ゴッツンコも、ぺろぺろも、ムギの最上級の、愛情表現だよ。

結局、一時間半も一緒に過ごせた。
まだムギは乗ってる気満々だったが、
夜中にまた来るよ、
会えたら、その時にちゅーるあげるね、と言って部屋に帰った。

これで、お互い、毎日のルーティンをこなせて、
満足した。

ムギは、すねたり怒ったりする。
本当に感情が豊かだ。



カウンセリングのあった日は、決してスッキリはしていない。
掘り起こした心が、ささくれているのだ。
ざわざわする。
だから、夫とも会いたくない。
不機嫌だと勘違いされてしまうからだ。

自分で、心をなだめることが必要。

そんなときの、猫って、効果的。

                                                伽羅moon3

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