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幼い記憶。

たいがい、そんなはずはない、と一蹴されるのだが、
わたしには、1歳と4ヶ月の時の、記憶がある。

両親と親族で旅行した時の写真が残っているので、
その現実は存在した。

わたしは、まだ歩けるようになったばかりで、
旅先で、母に縦に抱かれていた。

父が写真を撮りたがり、わたしを、
観光地の、ソテツが生えた、
ちょっとこんもりした所に立たせようと話し合っていた。

わたしは、まだうまく歩けないし、
一人でポツンと置かれるのは嫌だったので、
母に、猛烈に抗議をした。

けれど、わたしは、まだ言葉を話せなかったのだ。

泣きながら、やめて、降ろさないで、と頼んだのに、
ハイハイ、と母は軽く返事をして、
こんもりした所にわたしを一人で立たせた。

やっぱり裏切った!

わたしは、その裏切りが悲しくて、
泣きながら母を追いかけた。

写真の中のわたしは、泣きべそをかいていて、
動いていたので、ブレている。

それで両親は立たせるのをあきらめて、
お土産物屋さんの店先にあった、
10円入れると、がこんがこんと動く乗り物に乗せた。

わたしは、10円入れてもらえると思った。

けれど、ここでもまた裏切られ、
父が写真を一枚撮ると、
母がわたしを、乗り物からすぐに降ろしたのだ。

…大人を信用してはならない、と、
わたしは思った。
とても悲しくて悔しかった。

言葉を話せないから、きちんと抗議ができない。
しかし、脳内では、文章で、考えていたのだ。


帰省した時に、乗り物を動かしてくれずに、
すごく傷付いたんだと話したら、
母が、「お金なかったんやよ。」と言った。

だったら、旅行になんか行くな。
期待させて裏切るような行為をするな。

小さい子は、意外と、いろいろわかってるものなのだ。
話せないだけで、
実は色々考えている。

そして、猫も同じなんじゃ?と、最近思う。

猫型だから、話さないけれど、
すごくいろんなことがわかっているように思うのだ。

ちまだけでは、それに気づくことができなかった。
ちまは、情緒の安定した、手のかからない、
天使ちゃんだから。

ムギと出会って、ムギの魅力にやられて、
ムギの、多彩な感情や、行動や、目の表情を見て、
ああ、ここまでわかってるんだ、
今はこう思ってるんだ、と、気付くことがいっぱいあった。

だから、もう、ごまかすことは不可能だ。
ムギは、餌には釣られない。
まずは、愛情の確認が最優先。
ある程度満たされて、初めて、おやつをおねだりしてくる。

正直なところ、ちまは、餌でごまかせる。
でも、ムギには正面から本音で付き合わないと、
見抜かれる。


夕方、ムギに会えて、嬉しい気持ちで一緒に過ごしていると、
お姑さんが玄関から出て来て、こちらに来て、
「○○(夫の名前)がまだ帰って来ないのよ。」と言った。

時間はまだ夕方6時だ。
おばあちゃんが来てしまい、ムギは緊張して身を固くしている。
正直、邪魔しないで欲しい。
毎日のぞかれる。

仕方がないので、
「○○さんは、毎日7時半にしか帰って来ませんよ。」と答えた。
すると、
「なんか郵便が来ていてねえ、」と話し続けるので、
「○○さんが帰ったら見ますから。」と答えた。

それでも、べらべらと喋り続けるので、
このまま相手をしていると、ムギが逃げて、
お姑さんの、「もう死んでしまいたいわ~。」になるので、
わたしは、口をつぐんだ。
反応しないことにした。

しばらくべらべら喋って、お姑さんは戻ったが、
その後も、庭に出てきては、ウロウロするので、
ムギと二人で、息を殺した。

夫には、おかあさんのお話を、無視してしまいました、
すみません、と報告しておいた。

不思議なのだが、
お姑さんは、わたしに対して、「あなた誰?」とは言わない。

真っ先に、「あなた誰?」と言われ始めるのは、
わたしに違いないのだが、
物忘れが激しく、記憶が一分ももたないのに、
わたしの存在を、不審には思っていないようで、
それは助かっている。

お姑さんと、母屋で一緒に暮らしたのは、
たった9ヶ月間。
若い頃の記憶が鮮明でも、
80歳過ぎてから、突然家に入って来たわたしを、
覚えていてくれるのは、助かっている。

あなた誰?と聞かれて、返事をしても、
息子が再婚したことを忘れてしまっていたら、
フードつきのコートを着て、
ガレージの奥に座って、猫を抱いているわたしは、
通報されるレベルだと思うから。

お姑さんの脳内が、どうなっているのかは、
誰にもわからない。


今日、ムギは、降りたり乗ったり、ダッシュで敵を追い払ったりしながら、
一時間半、一緒に居てくれた。

会えない夜もあるけれど、
こんな風に、一緒に過ごせると、
わたしの、今の不安定な精神も、癒される。

ちまは無邪気でひたすら可愛く、
ムギは小悪魔ちゃんばりの魅力。

たまらんなあ。

この子達も、言葉では話せないだけで、
色々、わかってるんだと思う。

ちまとムギとわたしと、3人で暮らすのは、
やっぱり難しい。
ちまの精神的負担が大きすぎる。
一気に白髪が出てしまったのは、ストレスだ。
真っ黒だった耳も、色が抜けて、ピンクになってきてしまった。

ムギを幸せにしたい気持ちは山々だが、
ちまの幸せがあってこそなので、
この状態で、夫と力を合わせて、
ベストを尽くしたいと思う。

                                           伽羅moon3




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