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気持ちがせめぎあう。

夕べは、夫が寝るとき、
ムギは留守だったそうだ。
小屋に餌を入れておきますとメールが来た。

夜中2時、行ってみると、ムギは留守だった。
夫にもらった餌も手付かず。
乱れて、こぼれていたので、
一回出して、ベッドの中をキレイにした。

座って、ムギを呼ぶ。

捕まえて病院に入れるまでは、
9割の確率で、小屋で寝ていてくれた。
そして、留守の時は、呼んでも、帰って来なかった。
帰って来られない、何か事情があるのだと思う。

でも、試しに、何回も呼んで、
待ってみた。

15分だけ、待ってみよう。

風はなくて、寒くはない。
ムギ!と呼びながら、待った。

すると、数分で、キャッキャ!というムギの可愛い声がした。

ムギちゃん!

帰って来てくれたのだ。
ムギ、ママが呼んでるって思って、帰って来てくれたんだ!

ゆっくり歩いて、ムギは帰って来てくれた。
そして、すんなりと、わたしに乗った。

ムギちゃん…。
帰って来てくれたの?
ママの呼ぶ声を聞いて、帰って来てくれたの?

本当に嬉しくてありがたくて、
感激した。

人間の子供や、犬が、呼ばれたから来るのは、わかる。
でも、ムギは、猫なのだ。

猫という生き物が、呼ばれたからって、来る?

わたしは猫歴が浅いので、良くは知らないが、
呼んだって、来るタイプの生き物ではないと思っていた。

でも、ムギは、どこかで警備についていただろうに、
ママが呼んでる、と思って、
帰って来てくれたのだ。

可愛いよムギ。嬉しい。

しばらく乗っていて、わたしはムギを撫でた。
怖がると思って、毛布も掛けなかった。

しばらくしたら、小屋に入り、
ちゅーるを食べたい、と言った。
専用のガラス皿に絞りだしてやり、小屋に差し入れ。

ムギ、病院では緊張して、
ご飯を食べなかったそうだ。
ちゅーるは食べました、と聞いた。
もっと何本も渡せばよかったよ。
ごめんねムギ。ひもじかったね。

ちゅーるを食べ終わると、庭をパトロール。
今夜は、どうやら、何か来ているらしく、不穏なようだ。
ムギおいで、と声をかけたら、
「敵が来てるんだよ~。」という時の、
「ふうぅ~ん!」という発声をした。

そして、庭から裏の土手まで、走り回って、
警備していた。
わたしには相手の姿は見えないが、
ムギが頑張っている姿をしばらく見ていた。

やがて遠くに行ったようなので、わたしも帰った。


朝、夫が会いに行くと、
ムギは疲れていて、小屋からは出て来ず、
手から餌をもらい、残りは小皿で小屋に入れてもらって、
食べ始めたのだが、途中で寝てしまったようだ。
いわゆる、「ごめん寝」をしているムギの写真が送られて来た。

ムギ、疲れちゃったんだね。

今日は、気温は高いが、台風並みの強風。
自販機のゴミ箱が倒れて中身が散乱し、色んな音を立てている。
ムギはきっと、怖い思いをしているだろう。

わたしは、ムギの一件で、やはり相当な疲労をしているらしく、
起きるのも大変。

こんな状態なのに、またムギを捕まえて病院に連れて行くなんて、
絶対に不可能だ。
自分は倒れてしまうし、
二度とムギに信用してもらえなくなる。
ワクチンは、打ってもらって良かったのだと思いたい。

自立支援の更新に行かなくてはならないので、
ドリンク剤を飲んで、頑張って出かけた。

手続きはすぐに終わった。
帰宅して、シャワーして、洗濯して干して、
ムギに会いに行った。
時刻は5時半。

ムギは、車の横にいた。

姿は見えるが、目が合わない微妙な位置に座っている。
逃げることも、寄って来ることも出来る、
中間地点に座っている。

わたしは、音を立てずに、いつもの通りに座って、
ムギに声をかけた。
雨が降り出している。
ムギは2~3回、返事をしてくれた。

返事があるときは、甘えたい時だ。

でも、そのあと、無言になって、
車の前に移動してしまった。

お姑さんが何度も出入りする。
何回も郵便受けを開けている。

やがてムギは、姿を消してしまった。

会ってもらえなかった。

わたしは、ショックで、茫然としてしまった。

昨日の夕方には、乗ってくれたのだ。
確かに、怖がっていて、ビクビクしていて、
毛布も拒否だったけれど、乗って甘えてくれたのに、
なぜ、今日は、ダメなのか。

いくら考えてもわからない。
自分のどこに落ち度があったのかが、わからないのだ。

しばらく、落ち込んで放心していたが、
時間帯が悪いんだ、暗くなってからまた来てみよう、と思い直して、
一旦帰った。

そして、夜7時に、また行ってみた。

勝手口の電気がつけっぱなしになっている。
また、お姑さんが、ムギのところに行ったのだ。
毎回逃げられるって言っているくせに。
だったら、行かないでくれよ。

ムギは、いた。
でも、わたしの目の前で、
物置小屋の下の空間に、もぐりこんでしまった。

ショックだよ。
ママが来たとわかっているのに、隠れてしまったのだ。

勝手口の内側で、お姑さんがウロウロしているのが透けて見える。
そのうち、鍵を掛けられてしまった。

イラッとする。
勝手口の電気を消すためには、鍵を二種類開けなければならない。
しかも、どちらかしか掛けてないこともあれば、
ドアチェーンまでされてる時もある。

わたしは鍵を開けて、電気を消した。
ムギとは、暗い中で会うのが基本だから、
明るいと、警戒して、出てこないからだ。

そして、座って、
物置の下に潜んでいるムギに、声をかけ続けた。

ムギ、大丈夫だよ、怖くないよ。
ママ、ムギを捕まえないよ。
大丈夫だからおいで~。

幼な子をあやすように、ゆっくり、繰り返し声をかけた。
ムギが何回か返事をしたので、希望はゼロじゃない。

でも、なかなか出て来てくれずに、
わたしは、嘆きのメールを夫に送った。

目の前で逃げられてしまう、その悲しさ。
本当になんにもしないのに、信じてもらえない辛さ。
会えない寂しさ。


しばらくたって、物置の下に敷いてある砂利の音がした。

ムギが、しゅるん!と出て来た。
そして、一目散に、わたしの脚に突進して来て、
黙って乗った。

ああ、ムギちゃん!
来てくれたの?
怖かったのに、来てくれたの?
ありがとう!

決心して、出て来てくれたのだ。

わたしが撫でると、ムギは大きなゴロゴロを発した。
顔を見上げて、ニッコリもした。
ゴッツンコもしてくれた。

そうだよね、ムギ。
ムギだって、本当は会いたいし、甘えたいよね。
でも、すごく怖いんだよね。

怖い気持ちと、甘えたい気持ちが、
せめぎあいしていたんだね。

愛おしいムギを拭いて、ブラッシングした。
風が強いし、少し雨も吹き込むけど、
怖いかもしれないから、毛布しないね。

会えて嬉しいよムギ。
乗ってきてくれてありがとう。

夕方は、まだ、信用できなくて、怖いんだね。

やがてムギは、降りて座って、「おかかくれ!」とゴッツンコした。
おかかを食べて、次は向こう向きに乗る。

身体が冷えないよう、手でムギを暖める。
毛布、怖くなくなるといいね。
明日からまた寒いから。

すると、小屋でシーバを食べたいというので、
差し入れてやった。

そのあとも、また乗ってくれた。

勇気を振り絞って出て来てくれたのだから、
慎重に接していた。

そして夫が帰宅した。
わたしよりもちろんムギが先に察知した。
「ムギ、大丈夫だよ、パパだよ。」と言ったのだが、
ムギは飛び上がって逃げ出してしまった。

雨の中、走って行ってしまった。

パパが怖いのではない。
パパとママが、揃うことが、怖いんだよね。
捕まえられた時、二人がかりだったのだから、
怖いのは当然だよね。

でも、25分くらい、一緒にいられたから、
わたしも帰った。

夜中、いてくれるといいなあ。
冷えて来たから、毛布を受け入れてくれるといいなあ。



ムギのなかで、「甘えたい」と、「怖い」が、
せめぎあっている。
勇気を振り絞って出て来てくれたこと、
すごく感謝している。

この積み重ねを、コツコツ、何ヶ月もかけてやるのだ。
ムギは、餌ではごまかせない子なので、
信頼を積み上げて行くしかない。

ちょっとしたことに敏感なので、
しばらくは、何かを変化させることなく、
音も立てずに静かに、接したいと思う。

こちらも緊張するけれど、
ムギだって、勇気を出してくれて、信じてみようかな?と
思いつつあるのだから、
ここが踏ん張りどころだよ。

緊張で、背中が痛い。
疲れたよ。

でも、ムギが会ってくれると、幸福感に満たされる。
そのために、頑張る。

                                           伽羅moon3




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