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一進一退の歩み。

毎日、猫のことを書いていると思われるだろうが、
相手が猫であるだけで、
これは、人間関係の縮図でもある。

信頼を得ることは、非常に骨が折れることだ。

だからこそ、信じてもらえたときの、
喜びは大きい。

けれど、それを裏切って、ムギを捕獲せねばならなかった。

それは、ムギに元気に生きていて欲しいからだ。
病気になったり、ひどい怪我をしたら、
病院に連れて行きたい。
そのためには、年に一回のワクチンをしていることが条件。

ワクチンを打っていないと、診察してもらえない。
だから、捕まえて、病院に入れた。

ことさら喜んで、小屋から転がり出て来てくれたムギを、
捕まえてしまい、
わたしは、辛くて申し訳なくて、ムギのキャリーを抱いて大泣きした。

ごめん、ごねんよムギ。

もちろん、ムギには、
木曜日に、ムギのこと、病院に連れて行くよ。
怖くないよ。
お注射ちっくんするよ。
パパとママで、土曜日に、お迎えに行くね。
病院で、二つ、お泊りしてね。
と、何回も言い含めてある。

それを、どこまで理解できたかはわからない。
でも、鳴いていたムギが、車に乗った時に、
鳴きやんだ。
「ああ、こういうことか。」
と察したのかなと思った。

動物病院では、固まっていた。
どこに来たのかがわかっているのだ。

怖かっただろう。
緊張したし不安だったし、寂しかっただろう。

二つお泊りしたら、迎えに来るよ、ってとこまでは、
理解は難しかったようだ。


夕べ、夜中は、ムギは留守で、
呼んでも帰って来てくれなかった。

寂しい。
病院に入れるまでの間は、安定していて、
9割の確率で、小屋で寝ていてくれたのだ。

ちょっとでも留守にすると、警備が大変になるのだろうか。

会えなくて、悲しい気持ちで寝た。


それで、今日は、会いに行く時間帯を、遅くすることにした。

昨日、5時台には、逃げられてしまった。
7時に、やっと会ってくれた。

ムギには時間帯の概念がある。

なので、5時台に行ってもお互い悲しいから、
暗くなる、6時に、会いに行ってみた。

ムギ、また留守だった。

夫が朝あげた餌は食べてある。
だから、体調はきっと大丈夫。

座って、ムギを呼ぶ。
会いたい。
帰って来て欲しい。
そんなに遠くにいるわけじゃない、きっと聞こえてる。

時々呼びながら、15分くらい、待った。

すると、ちょっと遠くから、
「キャッキャ!」という、わたしに呼びかける時の、
ムギの声が聞こえた。

「ムギちゃ~ん!」
わたしは嬉しくなって、大きく返事をした。
ムギ、帰って来てくれたんだ!
今日は風が強くて寒いから、毛布をなんとか掛けたいな。

すぐに帰って来ると思ったのに、
その一声だけで、ムギは帰って来ない。
んん?

車の下を、のぞいたら、
ムギは車の前に座っていて、
車の後ろに座っているわたしを、
観察していた。

そうか。
まだ、怖いんだね。
怖いけど、呼ばれたから、会いたくて、帰って来てくれたんだね。

「ムギ、大丈夫だよ。もう捕まえないよ。」
「ムギ、怖くないよ、大丈夫。ママ、嘘はつかないよ。」
「ムギ、ママに乗らなくてもいいから、小屋でおかか食べよう?」

あの手この手で、ムギを誘う。

ムギは、愛情第一の子だ。
いくら好きでも、おやつでは、つられない。
だから、おかか云々は、言っても無駄なんだけれど、
可能な限り、気を引きたい。

片思いの子に接してるみたいだ。
必死なわたし。

でも、必死さが伝わらないよう、言葉はゆっくり。
身体は、微動だにせず、一切の音を立てない。

一進一退の攻防が続く。

昨日みたいに、やはり逃げてしまうのか、
それとも、その場所から、こっちへ来てくれるか。

じっくり待った。
ムギは、ママを試している。
怪しくないか、確認している。


やがて、「キャッキャ。」と声がして、
ムギがやってきた。
来てくれた!
ムギは、決心して、わたしに向かって一直線に来たのだ。
そのまま、頭から、乗ってくれた。

ああ、ムギちゃん、来てくれたの?
帰って来てくれて、ありがとうね。
乗ってくれてありがとうね。

身体には草の実がついている。
それを取り去って、シートで身体を拭き、
ブラッシングした。

風が冷たくて、ムギも寒いらしく、
わたしのお腹に密着して、身体をまるく縮めた。

ムギ、小さい毛布なら、怖くない?
そう声を掛けながら、小さいサイズのフリーズを引き出し、
そっと広げて、ムギに掛けた。

もちろん、100均の薄いフリースなので、
全部を覆えないし、寒いのだが、ないよりはマシだろう。
ちょっとずつ、怖くないよって、思ってもらわないと、
まだまだ、毛布でくるまなくてはならない気温が続く。

密着しながら、ムギはゴロゴロ言ってくれた。

ムギ、勇気が要ったよね。
信じてくれてありがとうね。
ママ、嘘はつかないよ。
大丈夫だよ、怖くないよ。
ママの愛情を信じてね。

そう言いながら撫でた。

やがてムギが降りて、「おかかくれ!」と鳴く。
風が強いから、小屋に入って食べな?と言うが、
わからないらしいので、小屋におかかの皿を入れた。
ムギが小屋に入って食べている時、
おかかの袋をさかさまに持ってしまい、
大量にこぼして、風で散っていった。

食べ終わると、出て来て、また乗ってくれた。
嬉しい。
今度はあちら向きなので、そーっと毛布をかける。

すると、毛布は怖いらしくて、小屋に戻ってしまった。

よし、ここまでにしよう。


深追いせずに、今日はここでやめよう。
ムギに、「シーバ入れてあげるから、小屋で食べなね。」と言い、
小屋に、大好きなシーバを入れてやった。
空腹らしくて、食べ始めた。

本当は、もっと居て、もっと見ていたいけれど、
ムギが小屋でくつろいでくれることが大事だと思い、
わたしは帰ることにした。

ムギ、夜にまた来るから、待っててね!

「ちょっと足りない。」ぐらいで、やめておくほうがいいと思った。
ムギが、「会いたい・甘えたい」と思わなければ、
絶対に絶対に会えないのだから、
やりすぎて、嫌われたら、木っ端微塵になる。

出てこなくてもいいから、
入院前みたいに、小屋で、くつろいで寝ていて欲しい。
外敵は、仕方がないけれど、
パパとママのことは、どうか信じて欲しい。

信頼を得るのは、積み重ねしかない。
コツコツ頑張るけれど、
悲しいよ、寂しいよって、言える相手も必要。

このあとまた、見に行くけれど、
会ってくれるかな。
小屋にさえ居てくれればいいんだけれど。

どうか、ムギが信じてくれますように。

                                            伽羅moon3




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