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別れは来るけれど。

お正月に、幼なじみのしーちゃんと会ったとき、
「ゴンが3年しかいなかったというのが驚きだった。」
と言っていた。

わたしが小学6年になった春に来て、
中学2年の春に、死んでしまった。
たった3年の命だったのだが、
しーちゃんとは、濃い付き合いをしている時期だったので、
もっと長く、ゴンが居た気がしたのだろう。

本当に、たった3年という、短い時間だった。

ゴンが来た時、
まさか、たった3年で死ぬとは思わなかった。

というか、死ぬことなんて、
考えもしなかった。

当然、わたしが大人になるまで、
ゴンはずっとそばに居てくれるんだと、
普通に考えていたのだ。

その当時は、どこの家だって、
犬は、庭に小屋があって、外飼いだった。
たまに、ヨークシャテリアを室内で飼っている家があったくらいで、
犬は全部、外に居た。

今、完全室内飼いのこの時代になって、
考えると、
小屋はあれども、古い毛布一枚で、
真冬に外で暮らしていたゴン。
余りにも可哀想に感じる。

寒かったよね。

元気がないね、食べなくなったね、って言って、
三日目の朝、
ゴンは小屋で冷たくなっていたのだ。

人生で、最も悲しい出来事だ。

それは、ゴンが、死んでしまったことだけでなく、
子供だったゆえに、
力が及ばず、ゴンを守れなかったことへの後悔や、
一緒の目線で悲しめる家族の不在や、
一緒に埋めに行こうって約束したのに、
わたしを待たずに、
勝手に裏山のどこかに埋めてきてしまった両親への怒り。

すべてが絡み合って、
たとえようのない、悲しい事件となっているのだ。

命に限りがあるなんて、
考えてもみなかった。

両親がまだ存命のわたしにとって、
最も大切な命を失ったのが、ゴンなのだ。
あれを上回る悲しみには、まだ遭遇していない。

大人になるまで、居てくれるもんだと思ってた。
まさか、そんな早く死んでしまうなんて、
危機感がなかった。


わたしの実家は、貧乏で、
父は車の免許もなかった。
バイクで、雨の日も吹雪の日も通勤していた。
三交替勤務だったので、
盆も正月もなく、日曜日に家族が揃うこともない。
母も働きに出ていた。

動物病院は、
隣街の国道沿いに一軒あるだけで、
車がなく、父が夕方帰ってくるような家庭ではなかったので、
病院に連れて行くタイミングを逸したのだ。

わたしにもっと発言権があったら!
様子が変だよ、走らなくなったよ、
病院連れて行こうよって、言える立場だったら!

わたしは、ゴンが死んだことで、母に怒鳴られた。
「だから犬なんて飼いたくなかったんや!」

母も悲しかったはずだが、
一緒に悲しむということのできる人ではなく、
そうやってわたしに当たり散らした。

わたしは、泣くことさえ許されず、
3畳間の自分の部屋にこもって、
声を殺して、毎日毎日泣いた。

誰ともわかちあえなかった。

一緒に泣ける家族だったら、救われたのに。

高校生の時に、
飼っていた犬が死んだと言って、
学校を休んだ友達がいた。
ちゃんと葬儀をしたそうだ。

わたしは彼女が、心底うらやましかった。
わたしは、ゴンがどこに埋まってるのかも知らない。

朝、冷たくなったゴンを数分撫でて泣いただけで、
最後のお別れも言わせてもらえず、
そのまま、ゴンとは会えなかった。

寒い夜、
ゴンしか同士がいなかったわたしは、
縁側に座ってゴンを膝に抱き、
星空を見つめて過ごした。

あんなに早く死んでしまうなら、
もっともっと、思い出を作れば良かった。
もっともっと、美味しいものを食べさせてあげれば良かった。

本当に悲しい。
一生、この悲しさは消えることはない。


ムギに出会って、三本脚だってことを知って、
きっとゴンちゃんが派遣してくれた猫だと思った。

今度こそ、任務を遂行しようと思った。

なのに、一緒に暮らせなかった。

ゴン、ごめん。
ムギ、ごめん。

なのに、ムギは恨むことなく、
ガレージに居ついてくれて、
ちゃんと小屋に入っている。

会いに行けば喜んで出て来て、
膝に乗ってきてくれる。

わたし、恨まれても仕方がないような仕打ちをしたのに。

ムギは最近、わたしを舐めてくれるようになった。
愛してくれているのだ。

綺麗な気持ちで、まっすぐに接してくれている。

かわいくて、切ない。
抱きしめて一緒に暮らしたい。
でも、ちまの寿命が縮むのは、嫌なのだ。
ごめんムギ…。

いつか、別れがやってくる。
それは必ずやってくる。

でも、心構えなんてできないし、
後悔しないようになんて、できない。

取り乱して、後悔をしまくって、
号泣するのだ。
何年も何年も、泣くのだ。

命を預かるというのは、そういうことだ。

別れは必ず来るけれど、
それまでの間、一生懸命、誠実に接しよう。

ムギを膝に乗せて、
黙って夕暮れを眺めて過ごした日々を、
一生忘れないように、
毎日を、大事に大事に生きる。

                                           伽羅moon3




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