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星のような子。

お正月、二日の日、
わたしが息子と一緒に居ると、
父が、何か言いたげに、部屋をのぞいた。

ちょうど母が席を外していたので、
わたしは父に目配せをして来てもらい、
小さい声で、父に謝った。

「あのね、お母さん、わたしと二人きりで喋りたそうにしてるんだけど、
わたし、今はもう、これが精一杯なの。
ごめんね。」

父はうなずいて、
「ええよ。何にも無かったかのように、普通に接してくれて、
ありがとうな。
お父さんが取り持ってお前が帰省したことはわかってて、
感謝されたから、これでええよ。」
と、承諾してくれた。

母は、もう禊は終わったものと思っている。
次またお盆に来たときにでも、と言われたが、
わたしには、そんなパワーはない。

息子の会社は、お盆休みがない。
なので去年は、8月の初旬に、
一泊でわざわざ行ってくれたのだ。

わたしはもう、一人では無理だ。
母は何も変わっていない。
一人で行けば、また同じことが繰り返されるに過ぎない。

父は2月に87歳になり、
母は3月に84歳になる。
そんな、超高齢な親のところに、行ってやるのが、
子供の務めだと思う。
きっともう、数えるくらいしか会えないのだから。

でも、行けばまた同じことが繰り返されて、
わたしは気絶して、
そのあとの精神状態も悪化する。

それを覚悟で行くべきか。

行かない罪悪感と、
行った場合の被害の、どちらを選ぶか。

何も終わっておらず、何も変わっていないこの状況で、
決めることが出来ない。



お嫁ちゃんが一人で来るのだが、
息子は歩いて駅まで迎えに行くらしく、
お昼に、父はお酒を飲んで、昼寝に行った。
わたしもコタツでウトウトしていた。

息子が出かけて、お嫁ちゃんを連れて帰って来た。

お嫁ちゃんは、見た目も綺麗だが、
それよりも、性格が可愛い。

礼儀正しく、素直で、品があり、
裏表がない。
すごくいい子だ。

だから、家事が出来るとか出来ないとか、
そんなことは、本当にどうでもいい。
息子がやればいいだけなのだ。

一気に場が華やいだ。
全員が、あれやこれやと、お嫁ちゃんを構う。

居間でみんなでお茶したあと、
コタツの部屋に行くと、
息子は、自分が座っていた一番いい場所を、
お嫁ちゃんに譲っていた。

枕を持って来て、たんすにもたれかかれるように、
工夫してやっていた。
なんて優しいの?
こんな風に、いつもお嫁ちゃんを大事にしているんだね。

夕飯は、父の手作り餃子。
毎年恒例。
父が具を作って、それを、わたしと息子と、
お嫁ちゃんで皮に包む。

わたしが教えたのに、
息子は器用で、わたしよりもはるかに上手。
餃子屋を開店できるくらい、みっしりと具を詰めて、
綺麗に包む。

お嫁ちゃんのは、ぺらぺらで、薄くて、
餃子というより、ラビオリみたい。
自立できない餃子なのだ。
上達していない。
でも、いつもちゃんと参加して、
ペラペラだとか、立たないとか言われても、
ニコニコしながら作る。

こっそり、息子が包んだものに立てかけて、
「ほら、立ってるよ。」と言って笑いを誘っていた。

彼女がいると、場がキラキラする。
お星さまのような子なのだ。

母親がいて、祖父母も見てるのに、
絶えず息子に触っている。
いちゃいちゃ。
本当に仲がいいんだねえ。

餃子を包んでいる時に、
お嫁ちゃんがボロボロこぼして、息子に、ああ、ああと言われ、
そのあと、ご飯の時に、
着てきた白いセーターを汚したくないなあと言いながら、
荷物をガサゴソしていた。

ダウンを来て食べようかなあ、と言っていたので、
わたしが、置いていくつもりで持って行った、
フリースの、下品な上着を出して、
こんなんでも良かったら着る?と聞いてみた。
およそ、お嫁ちゃんの好みとは正反対のものだ。

でも、いいんですか?って喜んで着てくれた。
なので、これはここんちに置いておくから、
来たときには着ればいいよ、と言ったら、
じゃあそうさせてもらいます、助かります、って言ってくれた。

母には、息子の半てんと一緒に保管しておいてくれるよう
頼んでおいた。

みんなで餃子を食べて、幸せだった。
楽しいね。


父がお風呂に入り、
続いて息子が入った。
そのあと母が入るのだが、父はお風呂上りに、
いつもビールを飲む。

つまり、夕方6時に食事しながら酒を飲むのだが、
夜9時半には、またビールを飲むのだ。

息子はそれにきちんと付き合っている。
祖父母の話をちゃんと聞いて相槌を打ち、
時々自分も喋り、場を盛り上げている。

その日は、父が遠慮したのか、
飲むぞ、と声がかからなかったようで、
息子がふすまの隙間から父を見ていた。
どうしたの?と聞いたら、
「いや、今日は飲まないのかなと思って。」と言うので、
ああ、冷蔵庫から出して、好きに飲めばいいんじゃない?と言ったら、
そういうんじゃないんだよ、
飲みたくて言ってるんじゃないよ、と言われた。

そうか。
息子は父に付き合って楽しませてくれていたんだ。
偉いなあ。

お互いに遠慮していたようだが、父が息子を呼んで、
お風呂上りの宴開催。

わたしがお風呂に入ると、
コタツの部屋にいるのがお嫁ちゃんだけになってしまうので、
息子はちゃんとお嫁ちゃんを呼んで、一緒に過ごしたようだ。

わたしのあとでお嫁ちゃんが長いお風呂に行った。
一時間ぐらいかかる子だ。

お風呂上りに、
寒くない? だいじょうぶ?と
息子は常にお嫁ちゃんを気遣っている。
そして親の目の前で、いちゃいちゃしている。

二人の会話を黙って聞いていたが、
もうたまえらなく面白くて、わたしは吹いてしまった。


その時、
ああ、こんな幸せな二人を見ていたいから、
もうしばらく、生きてるのもいいな、って思った。

お嫁ちゃんは東京の子なので、
大雪もツララも知らない。
満点の星空も、蛍も知らない。
わたしは、昔、どんなに綺麗なものが見られたかを話して聞かせる。

何かの話で、
わたしが、曲のイントロに超敏感だと話したら、
息子も同じらしいことがわかった。

今は年に一回か二回、特番でやるだけだが、
「クイズ・ドレミファドン!」を、
ど真剣に見て臨むことがわかった。
わたしもいつも見て、一人で答えて、悦に行っているのだ。
すごく得意。息子も得意なんだって。
親子だねえ。
こんなところが似ているなんて。

息子が、寝る前に歯磨きに行くとき、
お嫁ちゃんを誘っていた。
一緒に行こう?と誘って、
彼女が心細くならないように気をつけていた。

大事にしているんだね。
二人とも、本当に幸せそうだよ。
良かったね、いい結婚ができて。
わたしもすごく幸せだよ。

もうしばらく、生きててもいいなあって、
やっと思えた。

まだ続きます。

                                           伽羅moon3




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