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一つくらい必死に。

お昼に起きて、東の窓のシャッターを開けると、
隣の家の屋根に、
ムギが来ていた。

シャッターを思い切り上げたので、音にちょっと驚いていたが、
「ムギちゃん!」と呼ぶと、
にゃ~っと返事をして、
ムギが歩いて近付いてきた。

隣の家との隙間は、わずかである。
猫だったら、ジャンプしてこっちに来られる。

近寄ってきたムギと、少し喋った。
いちいち、返事をしてくれる。

手を広げて、
「ムギ、おいで!」って、言いたかった。

日向ぼっこしていただけかもしれないが、
ムギはこの窓が、わたしの部屋だということは知っている。
自分が暮らしたことがあるのも覚えてる。

猫は視力は良くないと聞くが、
ママがいて、喋ってる事実は揺るぎない。

ちまもやってきて、窓からムギをのぞいた。
ちまは、ちょっと塞いで、ベッドに戻ってしまった。
わたしは、窓から離れられない。

ムギ、ママに会いに来たの?
そうなの?

切ないよ。
ごめんねムギ。

しばらく喋っている間に、陽が当たらなくなった。
ムギ、もう寒いから小屋に帰りなね?
そう言うと、ムギは降りて行った。

今日は精神科に行かなくてはならないから、
今、ムギに会いには行けない。

心がざわつくが、仕方がない。
支度をして出かけた。

今日は風も強く、すごく寒い。
ダウンコートを着て、マフラーも巻き、
手袋までした。
ムギ、小屋に帰ったかな。
小屋で寝ていてくれるかな。

病院は空いていて、一番に呼ばれた。
薬に変更はなし。
今の思いをちょっと話して聞いてもらった。

薬局に行くと、数人待っていたので、コンビニに行き、
夕飯を買った。
帰ったら、シャワーして、軽く何か食べて、
すぐムギに会いに行こうと思った。

けれど、先生が処方箋を書き間違えていて、
薬局から確認してもらったので、随分待った。

急ぎ足で駅に向かい、小走りで電車に乗り、
2回乗り換えて、最寄り駅に到着。
バナナと飲み物だけ買って、急いで帰宅した。

ちまがお出迎えしてくれた。
ちまにご飯をやり、自分はシャワーして、
パンを食べて、しっかり着込んで、
ムギのところに行った。

ムギがいなかった。

小屋から慌てて飛び出したらしく、
小皿と敷物が外に出ちゃっていた。

呼びながら待つ。
すごい風で、すごい寒い。
裏の土手から、寒風が吹き降ろしてくるのだ。

呼び続けて30分待ったが、ムギが戻って来ないので、
一旦帰った。
寒すぎる。

洗濯機を回し、ちまのケアをし、
夕飯を食べた。

そのあと、ムギのところに行った。
まだ帰っていない。
小屋に入れてあげた餌にも手がつけられていない。

また部屋に戻る。
気持ちは真っ青。

ムギが気がかりで、何も手に付かない。
何一つ、やれない。
洗濯が終わったので、それをどうにか干して、
また行ってみた。

すると、餌がなくなっている。
ムギ、一回帰って来たんだ?と思うと、
ムギは車の下に潜んでいた。
ママだってわかってるだろうに、今夜は不穏らしくて、
隠れていたのだ。

わたしが座って、優しく呼ぶと、
ムギはやってきて、脚に乗った。

体を撫でて、怪我がないか、確認して、
草の実を取り、お尻から出てたものをひっぱって抜いて、
毛布をかけてくるんだ。

ムギ、今日はお疲れさま。
すごく寒いね。
敵が来てるの?

ムギはゴロゴロ言わない。
耳をぴんと立てて、周囲の音を聞いている。

しばらくしたら脚から降りて、座って、ゴッツンコしてきた。
おかかの催促。
もう、粉の部分はあげないようにするからね。

おかかを食べて、出かけようとするムギを、引き止めた。

脚に乗る。
でもまたすぐ降りる。
シーバを食べたいと要望。
手から、一粒ずつ食べる。

途中で軽くパトロールに行き、
戻って来て、土手を見張っている。

脚に乗ったと思ったら、小屋に入り、
小屋に餌を入れてやったら、ちょっと食べて、
また出かける。

全然、落ち着かない。

戻って来て小屋に入り、ムギがわたしに、
「敵が来てるんだよ~。」と、鳴いた。

先日、柿の木に、白い野良猫が来ていたときと、
全く同じ発声だったから、
敵が来ていて、脚に乗っていられない、
ってことだとわかった。

そしてまた小屋から出て、
土手を駆け登り、物置小屋の下を猛スピードで潜り抜け、
庭を走り回っていた。

ムギには敵が見えているのだと思うが、
わたしには見えない。
加勢してやることができない。
悔しいよ。

寒さの厳しい日、雨の日、
こんな日にはムギには小屋に入っていてもらいたい、って日に、
ことさら、狙われる。

ムギは一人で闘っている。
何もしてやれない。

小屋にはカイロを仕込んで暖かくし、
小屋の中に餌を入れて、帰って来た。

夜中にまた会いに行くけれど、こんな不穏な夜は、
会えないかもしれない。

夫には、必死になりすぎて重いと言われる。

でも、命を守るのって、ある意味必死じゃないとできないよ?
今のこんなわたしには、
一つくらい、必死になることがあっても、いいよね?

ムギと何年暮らせるかわからない。
だから、居てくれる間は、わたしは必死にやる。

だって、ママだもの。
当たり前だよ。

ムギ、無事でいてね。
今から行くよ。

                                             伽羅moon3




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