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こころがうつくしい。

わたしは、わたしの心が美しいとは思えない。

何年もカウンセリングで吐き出しているのに、
怒りが消えない。
後悔もなくならない。

でも、うつくしい心を持った人のことは、わかる。

息子の魂は、うつくしいと思った。
わたしとは比べようも無い、高い次元の魂だと思った。

その息子が、初めて、
「彼女が出来た。」と話してくれたとき、
ああ、それはもう、結婚に至る運命の人なのだと、
瞬時に思った。

名前、境遇、誕生日、血液型、
何をたずねても、やはり運命の相手なのだと思えた。

お嫁ちゃんに初めて会ったのは、
東日本大震災の次の週。

わたしは横浜での個展の初日に被災し、
ギャラリーで泊まらせてもらった。

個展は、翌週の週末に、延期してまたやらせてもらったが、
震災当日に来る予定だった人が多く、
震災の悲惨さが辛くて、
あまり人は来なかった。

土曜日に、息子が当時彼女だったお嫁ちゃんを連れて来た。

正直に言うと、
そんなに美人でもないし、
見た目に惹かれたわけではないのが逆に理解できた。

控えめで、優しい声で喋り、
礼儀正しく、
緊張している様子が、初々しかった。
パールのペンダントを欲しがってくれて、
息子は、給料日前でお金がないというので、
もらうつもりもなかったが、そのペンダントを、
わたしがお嫁ちゃんを座らせて、つけてあげた。

帰るときに見送っていると、
何回も振り返って、頭を下げていた。

4年も付き合って、彼らは結婚した。

仲がいいというのは、こういうことなのか、と
びっくりするような夫婦になった。

二人は、「きょうだい?」と聞かれるくらい、似ている。
ソウルメイトとは、そういうものだ。


夫と再婚するとき、
次女は、人見知りが激しいので、
他人が家庭に入ってくることを嫌がって泣いたそうだ。
親の前で、本心を出して泣けるなんて、とてもうらやましい。
お姑さんも、わたしを良くは思わなかった。
一緒に住んでもいいが、籍を入れるなと言った。

でも、長女だけが、
「パパと結婚してくれてありがとう。」と言ってくれた。

彼女は、息子と同い年だが、
彼女一人が、パパの孤独に気づいていたのだ。

だから、家事がまったくできないわたしでも、
パパには居た方がいいと思ってくれたのだと思う。

彼女は、先妻さんにそっくりだ。
見た目が、見分けがつかないくらい、似ている。
同じ優しさも持ち合わせている。

それを、理解した存在がある。

ムギ。

夫が出張で留守のとき、
朝は、長女がムギに餌をやってくれている。
ゴミ出しもお願いしていて、わたしはすっかり甘えている。

先日書いたように、
ムギは、「状況」にすごく執着する猫だ。

小屋の前に決まった敷物があり、
そこに座椅子を置いて、わたしたちが座らないと、
ムギは寄ってこない。
立っている足元にじゃれつくなんて、絶対にしてこない。

だから、多少の雨風でも、その状態を作らないと、
会ってもらえない。
敷物が無いと、来ない。
先日は、敷物が湿っているので、バスタオルを敷いたら、
その感触がいつもと違うから嫌だといって離れてしまったくらいだ。

夕べ、雨だったけれど、
状況を作って、ムギに会えて、
そのあとも雨がひどくなる予報だったので、
わたしは夜中に敷物と座椅子を、室内に片付けた。

朝、長女が餌をやってくれたとき、ムギは小屋にいただろうかと、
気になってメールで聞いてみた。

すると、
ムギはちゃんと小屋に入っていたらしかった。
良かった。夕べから今朝は冷えたからね。

そして、長女が餌をお皿に出していると、
ムギが近付いて来たという。

そして、彼女の手から、餌を直接食べた、と
返事が来た。

ええ?
ウソ!
そんなことってある?

にわかには信じがたかった。

だって、片付けてある敷物と座椅子を、長女は、出していないのだ。
それら無しで、ムギはおねえちゃんに近寄って行ったという事だ。

それ…
すごくない?
すごいよね?
すごいよ!!

びっくりした。
ムギ、何もない状態で、お姉ちゃんに寄って行ったのだよ。

夕べ夜中に、ご飯はいっぱい食べた。
だから、食べることだけが目的ではないと思う。

おねえちゃんが時々世話をしてくれて、
おねえちゃんはやさしくて、
おねえちゃんはボクのことが好き、って
ムギは、気づいたのだ。

すごいよムギ。
ムギに、家族が増えて、嬉しいよ。
おねえちゃんがやさしいこと、わかったんだね?

動物の心は、ごまかせない。
邪念なく、人を見るので、純粋な判断だと思う。

ムギにはわかったんだね。
ムギ、もう一人、甘えられる人ができて、良かったね。

長女には、それがどんなにすごいことかをメールしておいた。


ムギが夫の和室にいるとき、
わたしは、罪悪感で辛すぎて、
ほとんど、ムギのところに行けなかった。
行くとお姑さんが来て毎日同じ話をされることも苦痛で、
脚が遠のいていた。

その時期には、ただの一枚も、
ムギの写真を撮っていない。

わたしの代わりに、長女と末っ子くんが、
ムギの世話に参加していてくれた。

それを覚えていると思う。

ムギはいつも、たんすの上にある段ボール箱の上から、
しらーっとわたしを見下ろしていた。

寄って来てはくれなかった。

自分を捨てた人だと思って見下ろしていたと思う。
わたしは、自分のことが恥ずかしかった。
安易に、ちまと三人で暮らせると思って、浅はかだった。
激しく悔やんだ。

それからムギがお外に出て行き、
ガレージを選び、
夫が床を張り小屋を置いて、
ムギは、「うちの外猫」になった。

器量がいいし、声も可愛いし、
きっともっといい飼い主さんに出会えると思うのに、
ムギは自分の意思で、ガレージに置いた小屋に居てくれている。

その生活になって一年が過ぎた。
ムギは毎日頑張っている。

そして、おねえちゃんが味方であること、
自分を可愛いと思ってくれてることを、
しっかり理解したのだ。

長女も、うつくしい魂の持ち主だからね。
ムギには見えるんだよね。


夫の長い出張のとき、
わたしは重圧で心がしんどい。
何かあったら、わたしがちまムギを守らなくてはならない。

でも、長女が加わってくれた。
ムギが安心して甘えられる存在になった。
ありがたい。
とても嬉しい。

ムギ良かったね。家族が増えたんだね。
ずっと仲良くしていこうね。

                                         伽羅moon3



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