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それでもバラ色と思う。

父から手紙の返事が来た。
わたしたちは、こんな時代に、
「文通」という、アナログなことを開始したのだ。

父と母はいつもかも、くっついて一緒にいるので、
父にだけコンタクトを取るのが困難だったのだ。

わたしは父と母に手紙を書き、
それぞれを違う封筒に入れ、
二通を一つの封筒に入れて出している。

父宛のは、「親展」扱いである。
でも、もう母のことは、悪く言わない。
父は知っていたからだ。
その上で、わたしを受け止めてくれた。

もうこれで、思い残すことはない。
父が生きているあいだに、本音でやり取りができて幸せだ。

今回の手紙には、辛い思いをして可哀想に、とあった。
いますぐに行って話しを聞いてやって、
なぐさめてやりたいけれど、もうそれはかなわない、と書いてあった。

父はもう、86歳なのだ。
生きているあいだに、あと何回会えるかわからない。
片手くらいの回数で終わってしまうだろう。

だから、その隙間を、手紙で埋めるつもりでいる。
こんなオバサンになってもなお、父に甘えたくてたまらず、
可哀想に、と書いてもらえただけで、わたしは癒される。
無条件で存在を受け入れてもらえる幸福感に満ち満ちる。


丸五日間という絶食で、
わたしは色々学んだ。

「衣食住」という言葉がある。
「食」は命にかかわる。
人間としての尊厳にかかわる。
精神的にも、おかしくなっていくとわかった。

極限状態になると、
大好きな霜降り和牛なんて思い描かない。
味のついた旨みのある「汁」が飲みたいと思う。

着る物だって、暑さ寒さをどうにかしのげれば、
デザインなんてどうでもいい。

でも、退院してきて、「食」が足りると、
わたしは「住」にこだわり始めた。

わたしは、旅行に興味がない。
田舎の風景なんて見飽きてるし、
お風呂が嫌いだから温泉に興味ないし、
朝早くに起きて、朝食ビュッフェを楽しむこともできない。

だから、一生、どこにも行かなくて全然平気だ。
むしろ、どこにも行きたくない。

だから、自分の居住空間にはこだわる。
このアパートに越してくる時も、
かなりこだわった。
カーテンだって、一級の遮光・遮熱・遮音のものだ。
色も水色でお気に入り。

今日も押入れの中を整理した。
空き箱が二つ出た。
粗大ゴミに出すものも引っ張り出してきて、
もう、申し込んだ。

手術までの期間、予定はびっしりだ。

今日は色鉛筆にも取り掛かった。
頂いたセットを、一本ずつ拭いて、カッターで削った。
500色の色鉛筆は、
まずは付属の色見本長に色を塗ることがスタートだった。

ひたすら、丸の中を塗りこむ作業をした。
ただ、丸を塗っているだけなのに、すごく楽しい。
デビッド・ボウイを聞きながら、丸に色を塗る。


いろんなことが起きるし、
人間関係も、うまく行ってるとは言えないけれど、
わたしは、今が人生で最高に幸せだと思う。

どう考えても、今が一番幸せなのだ。

夕べは、よっぽどベッドが嬉しかったのか、
興奮して眠れず、朝方になってやっと寝た。

この世で最も憎い人の夢を見る。
それは前夫の母親。

夢から覚めて、安堵する。

今はこんなに素敵な部屋があって、
来週からはベッドに寝られる。

すい臓がまだ痛いし、
リウマチがどんどん悪化してきていて、
握れないし、膝が曲がらない。

それでも、どう考えても、
今が一番幸せなのだ。

お付き合いをしているごくわずかな人々は、
心が通う人ばかりだ。

マッサージにも行ける。
カウンセリングにも行ける。

身体の痛みは、いずれ消せる。
でも、傷付いてしまった心は、簡単には戻らない。

それでも今を幸せだと感じることができる自分こそが、幸せだ。


また父に手紙を書く。
いい年をして、わたしは、父に甘える。
インナーチャイルドを癒してもらう。

前世、江戸時代でも親子だった父。

指がこわばり、ペンを握るのが難しくなってきた。
早く返事を出そう。

                                           伽羅moon3


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