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忘れることはない。

恐ろしい夢を見ていた。

仕事を失った。
収入が途絶えた。
もちろん貯金はなく、
カードローンもしている。

月末が来る。
どうやってカードローンの返済をしよう?
家賃をどうやって払おう?
電気代は?
ガス代は?
督促状の嵐。
恐怖で家の電話には出られない。

息子を抱えて、恐怖に立ち尽くしている自分。


そこで、ハッと目が覚めた。

現実に戻るまで、しばらく時間がかかった。

そうだ。
わたしは、結婚したんだ。
夫がいるのだ。
住まわせてもらえる家があって、
月末の支払いに怯えなくてもいいんだ。

息子は無事に大人になり、
結婚して家庭を持ったのだ。
もう、子供じゃなくなってる。

そのことに気づいて、わたしは泣いた。


貧乏は、怖かった。
電話に出られなかったのは事実だ。
督促状が来てたのも実際に起きていたことだ。
働き始めたばかりの息子に、生活費を出してもらった月もあった。
辛かった。

今、わたしは、何も困っていないじゃないか。
なんてありがたいことだろう。
わたしを恐怖から救ってくれたのは夫だ。

夫がいるから生きていられる。
全部夫のおかげだ。
あの恐怖から救ってくれた。


息子のお弁当に、何も入れるものが無くなった日もあった。
仕方なく、玉子だけのチャーハンと、
キャベツだけの焼きそばを、お弁当箱を斜めに区切って入れ、
紅しょうがで飾って、持たせた。

息子が持って帰ってきた、空っぽのはずのお弁当箱に、
エビのシッポが一個入っていた。
息子に尋ねた。

すると、息子は、
自分のお弁当をみんなが珍しがって、食べたがったので、
回してあげたのだという。
そしたら、その中の一人が、お礼に、
エビフライを一本くれたのだそうだ。

それを聞いて、わたしは泣いた。

そんなお弁当を、恥ずかしいとも思わずに、
友達に回してあげられる息子。
エビフライもらったと嬉しそうに語る息子。

あんな貧しいお弁当に文句も言わず、
何も贅沢を言わず、
手巻き寿司のメインがカニカマでも、喜んでいた息子。

苦労をかけた。
すごく切ない。
ごめんよ。

そればかりか、「貧乏、いま役に立ってるよ。」と言ってくれる息子。

あの、エビのシッポを思い出すたびに、
わたしは泣く。

そして、夫は息子の結婚式に出てくれて、
結婚のお祝いも、
マンションを買った時のお祝いも、沢山してくれた。

全部夫のおかげだ。



わたしは、起きて、夫に、
一緒にお昼ご飯どうですか?とメールをした。

わかめ、ねぎ、みょうが、大葉、揚げ玉を入れた、
ぶっかけそうめんを作って、
二人で食べた。

食後に甘いコーヒーを入れて飲んだ。

怖い夢のことは話さなかった。

つい、愚痴書いてしまうけど、
夫がいなかったら、
わたしはすでに、生きていなかったかもしれない。

息子に、良くしてくれて、感謝している。
何よりも、夫の存在が、息子の重荷を減らしてくれている。
ありがたい。
本当にありがたい。


貧乏は、辛いのではなく、恐怖だった。
今、猫を飼い、好きな音楽を聴いて生きているこの幸せを、
噛み締めながら、毎日を過ごそう。

貧乏の恐怖を、忘れなくてもいい。
今の生活に感謝する材料だから。

だけど、心の中に染み付いた恐怖からは、
逃れられないものなのだとあらためて思った。

                                           伽羅moon3

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