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【第1000話】銀の靴

おかげさまでこのブログ『銀の靴』は、第1000話を迎えました。
始めてから3年半余り。うつ病と診断がついてから4年余が経過しています。

うつ病ブログに移行するまでは、どのカテゴリーに所属したらいいかわからない内容のブログでした。訪れる人も少なく、コメントを下さる人もなく、ただ自分の記録と、書くことによってしか感情を整理できない自分のために書き続けて来ました。

本当に実話?といぶかしんだ読者の方も多かったようです。
一緒に暮らす部屋のカギを不動産屋さんにもらいに行く日に、結婚を約束していたその彼が消えたのですから…。

毎日メールが何往復もし、電話をし、週に一度は会っていた彼。
部屋を探し、とある駅から程近い2階建てアパートの角部屋を借り、いよいよ彼はそこで暮らし、わたしは息子と暮らしている部屋から通う予定でした。
部屋のカギをもらったら一緒に掃除機を買いに行って、わたしは掃除をし、彼は取引先に仕事に行き、週末の記念日にはそのぼろっちい部屋でワインを飲もうねと約束していました。
付き合って丸二年の記念日を迎える幸せな部屋になるはずでした。

ところが、その朝から彼とぷっつり連絡が取れなくなったのです。
メールをしても電話をしても反応がない。
そんな日は…そう、どんな困難な状況のときも何とか彼はメールはくれたのに…そんな日は一日としてありませんでした。
やがて、携帯の電源が落ち、連絡する術を失いました。

何かがあった…。
とてつもない何か大事〔おおごと〕が彼の身に起きている。
潰れそうな心を抱えて、起き上がっていることもできず、わたしは丸くなって一日を過ごしました。
幸せなスタートになるはずだった弥生のつひたち。

翌朝、真っ暗な心を抱えて広げた新聞の社会欄に、わたしは彼の名を見つけたのです。

そこからわたしの戦いの日々が始まりました。

彼は、逮捕されていたのです。
それも、警察にではなく、東京地検特捜部に。
全国紙の社会面に掲載されるような事件でした。

その記事の内容が頭に入るまで何度も読み返しました。
なにか間違っていないか。巻き込まれただけなのではないか。誤解されているだけではないか。
しかし事件はわたしが彼と出会う以前の時期に犯した罪でした。
知らない彼がいる…。

わたしは立ち上がり、着替えて化粧もして、まだ真冬のような3月の街に出かけて行きました。
彼の足跡を探しに。手がかりを求めて。
手には緋色の鞄を持ち、グレーのコートを着て、足には彼が買ってくれた〔銀の靴〕を履いていました。

緋色の鞄・銀の靴。

貧しかったわたしは他に代わりも持たず、その二つを身につけて、彼をこの手に取り戻そうと必死に戦いました。
やがてわたしは精神を病み、体はボロボロになっていきました。

その実話の記録がこの『銀の靴』なのです。

          ++++++++++++++++++++

夕べ仕事の手を置いて、PCを少し眺めているときに、どういうわけかわたしは東京拘置所の航空写真を見ていました。
その写真は少し古くて、拘置所がまだ工事中のものでした。
まさにわたしが面会に通っていた頃の容貌なのです。
緑が全くない荒涼とした広大な敷地に、人を阻むような灰色の冷たい建物がその容積を増しているとき、わたしはまだ雪のちらつく春の初めから梅雨の時期まで、欠かさず東京拘置所に通いました。
航空写真を拡大して見てみると、テレビの中継などがよく行われるあの門から駐車場を抜けて仮の歩道橋を渡り、建物の玄関に至るまで、人影がパラパラと写っていました。

そこに自分が写っているのではないかと、わたしは必死に目をこらしました。
もちろん真上から撮った写真ですから人物の確定は不可能です。
けれど、歩道橋を渡っている髪の長い人物が自分かもしれないという妄想に取り付かれ、わたしは拘置所の金網が張られた屋上をくまなく画面で探し続けました。
彼が写っていやしないかと…。


わたしは、愚かな女でした。誰の目から見ても明らかにバカな女でした。
人を救うなんてそんな大それたこと、できる器でなどありはしないのに、わたしが彼を救う!と信じて聞く耳を持たず、ただひたすらに無理を重ねていたのです。
走り続けた銀の靴はかかとがなくなり銀色もはげてボロボロになりました。

でも、唯一救いがあります。
その時期の自分を、わたしは嫌いではありません。
過去の自分を全て嫌いだと思っているわたしが、その愚かしい馬鹿げた自分を、愛おしく思うのです。
よく頑張ったね。必死だったね。心から信じて頑張ったんだよね…。

小菅の駅から拘置所の門までの遠い道のりを、ボロボロになった銀の靴を履いて走っているわたしを見つけたら、抱きしめてやりたい。
どんなにバカでも愚かでも身の程知らずでも、信じて頑張っていた自分を、唯一わたしは好きだと思えるのです。

           ++++++++++++++++++++

うつ病は思っていたよりも重く根が深く、強迫性障害と適応障害とパニック発作を伴っています。診断から4年余り。発症はいつからかはもうわかりません。典型的な仮面うつだったからです。
今わたしは二度の転院をし、最初のカウンセラーを亡くしたため二人目のカウンセラーにかかっています。
少しでも生きやすくなるために、再婚した夫の庇護のもとで療養をしています。
靴も今はたくさん持っています。
幸せにしています。

刑期を終えたかの人は出所して一人で暮らしているらしいと聞きました。
わたしは発病して逃げたのです。
そして今は生きてきた中で一番幸せに暮らしています。

いまもこのブログには、「拘置所」、「面会」、「刑務所」などのキーワードでたどり着いてくる人がいます。大切な人が逮捕されて苦しんでいる人がたくさんいるのです。
監獄法は改正され、それ以前の話であるこのブログは役には立っていないかもしれません。
犯罪は当人だけでなく、家族や周りの人たちの人生を変えてしまいます。
どうかどなたの上にも希望が灯っていますようにと願うばかりです。

今『銀の靴』はうつ病のブログです。いろんな日常を取り混ぜながらこれからも続きます。
今までありがとうございました。
そして、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

                                            伽羅moon3にほんブログ村 メンタルヘルスブログ うつ病(鬱病)へでっかいバナーで失礼します。よろしくお願いいたします。
本日特別に、コメント欄を開放させていただきます。記念の記事なので、どうか誹謗中傷はご遠慮くださいますようお願いいたします。
昨日は制作室ブログへの応援ありがとうございました。

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コメント

1000話到達、おめでとうございます。

いつも、とても無理して苦しそう‥、とドキドキしたり、やきもきしつつ拝読しております。

でも、苦しいことがあったからこそ 伽羅さんとNさんの、今の日々があるのですね。

そして、今も時々苦しそうで、大泣きされてるけど、 そうして伽羅さん自身が
長い長い過去の思いを、治療し、徐々に克服して行ってるような感じがします。

そうであればいいと思います。
よかったですね。

投稿: kasako | 2011年1月12日 (水) 01時11分

1000話、おめでとうございます。
凄い。
ウツって続けることができなくなるのに、ここまで書き続けられるのってすごいです。
そのおかげで私は伽羅さんに出会えました。
神様の思し召しだと思ってます。

色々ありましたねぇ・・。
一歩一歩歩んできたのがよくわかります。
時々、本当に前に進んでいるのかわからなくなるけど、その時は一休みしてまたゆっくり歩きましょうね。
ありがとう。
大好きです。

投稿: マハロ | 2011年1月11日 (火) 23時28分

はじめましてconfident
第1000話おめでとうございます

伽羅さんのブログをみて
なんとか欝をのりきる力になりそうな
気がします
時間のあるときに過去記事も
読ませていただいています

よく遊びに来ていますが
不審者と思われていないか
ちょっとドキドキでしたが
コメントができたので
ちょっとほっとしました

これからも応援しています

投稿: ころん | 2011年1月11日 (火) 21時58分

第1000話達成、おめでとうございます。
3年半余り・・・、ほとんど欠かす日がなかったということですね。

初めて、伽羅からこのブログを書いてるから読んで欲しいと言われてから、ほぼ同じくらい途中数ヶ月のブランクがありますが、ずっと読者を続けています。

もちろん、伽羅のことを知るために読んでいますが、そのことにより大きな葛藤が自分の中に生まれることもしばしば・・・。

これからも、続けていくのでしょうが、うつ病が治ったら、どんなテーマに変わっていくのでしょうか、楽しみです(笑)

末永く、このブログを続けられることを祈っています。

投稿: N | 2011年1月11日 (火) 05時59分

こんばんわ。ご無沙汰してます。ゆきんこHです。
投稿1000件の到達,おめでとうございます。伽羅さん(キャラ姫さん)にとって,このブログ活動が,とても大切な支えとなっているからこそと思います。
私自身は,「銀の靴」が始まったころと比べて,ネット自体を見る機会も少なくなり,最近は,ときどきRSSリーダーでタイトルだけ拝見して,活溌にブログを続けておられるのを確認する程度でしたが(・・ごめんなさい・・),記念すべき回と思って,久しぶりにコメントをさせていただきました。

話は全然変わりますが,・・・ちょうど今日,6年半つかっていた携帯端末を,機種変更で新しいものに変えてきました。もうボディは擦り傷だらけだし,バッテリーも1日持たないくらいに消耗していて(笑),とても使いづらかったのですが,使い始めたころ,この携帯が,当時大好きだった人との距離を縮めるきっかけを作ってくれ,思い出のメールとかもたくさん入っていて,なかなか手放せなかったのです。さすがに,使い続けるのは限界に達したので,新年最初の連休を利用して,携帯ショップに行って来たのでした。思い出は思い出として,心に刻んでおくことにしようと思います。

投稿: ゆきんこH | 2011年1月 9日 (日) 21時52分

伽羅さん、1000話本当におめでとうございます。
歩いてきましたね、ここまで。命を削って、必死で。

私もほんとうに激しい長い道程を歩いてきました。
おかげさまで今は少しだけ平和で幸せです。

これからもお互い歩いていきましょうね。
人生という道を。
厳しいときも穏やかなときも、自分を見失わずに、心くじけずに。
伽羅さん、これからも応援し続けますからね、ずっとずっと。

投稿: こみかん | 2011年1月 9日 (日) 00時32分

伽羅さん、初めまして。
第1000話おめでとうございます。
慧理と申します。
昨年の秋に「銀の靴」を知ってから第1話に遡り読ませて頂いていました。
私はうつ病・社会不安障害・摂食障害者です。

伽羅さんの言葉を読んでいると「今・過去」の自分が重なって胸打たれることが多くあり、ぐいぐい引き込まれております。
隠れファン…という表現は失礼かもしれませんが、これからもこっそり通わせて頂こうと思っています。

どうかお身体ご自愛ください。
長文失礼致しました。

投稿: 慧理 | 2011年1月 9日 (日) 00時25分

ブログ記事「第1000話」おめでとうございます。
いつも興味深く記事を拝見しております。

「銀の靴」というタイトルには、こんな事実や想いが
こめられていたのですね・・・。
読んでいて、とっても切なくなりました・・・。
だけど、だからこそ、伽羅さんが今の生活を「幸せ」だと感じていらっしゃる事実が、本当に嬉しく素晴らしいことだと思います。

うつはしんどい病気ですが、私を含めたくさんの人たちが伽羅さんを応援しています。
一緒に、希望を目指して進んでいきましょうね^^

これからも、ずっとずっと応援していますよ!!!

投稿: ミナコ | 2011年1月 8日 (土) 21時49分

伽羅さん、お久し振りですね。
いつも記事はちゃんと読ませてもらってましたよ。
コメントも出来なくなったので、読むだけでしたけどね。
その間にも色々な事があったし、勿論「銀の靴」を履いていた頃も色々な気持ちが伽羅さんを襲っていたんだろうなって思います。
でも、最近新しいカウンセラーさんと出会えて、その方は伽羅さんにとっても合っていたようで、安心しました。
これからも色々な事、心の中での葛藤もたくさんあると思うけど、いつでも「伽羅さんらしく」生きてほしいです。
そしてお互いに一生大事な息子を愛していきましょうね。
「第1000話」おめでとう(^^)

投稿: non | 2011年1月 8日 (土) 20時37分

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