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2本の鎖

二週間後大学病院に行くと、卵巣の腫れは引いており、内膜も増殖してはおらず、癌でもなく、更年期障害でもない、という見解でした。

一時は助からないと思った子宮も卵巣も、どこも悪くなく、出血も止まったということに、わたしはキョトンとしていました。
その日は確認のために採血をしただけで帰され、喜んでいいのだけど、どういうことだか全くわからないと首を傾げました。

また二週間様子を見て、何事も起きず疑わしいこともなければ、わたしは
無罪になるとのことでした。


彼が刑務所に移ってから、わたしは、もうそろそろいいだろうと思い、
逮捕の前後のことを詳しく手紙に書いてくれるよう頼みました。
手紙には、こんなことが書かれていました。


大阪の民事裁判で敗訴しながら一銭も返さないでいたため、東京地検から呼び出されて、逮捕の数ヶ月前から何度か検事に会い、要求された書類などを提出していたとのことでした。
なので、逮捕の日も、早朝6時に検察が踏み込んで来たにもかかわらず、逮捕されるとは思っていなかったのだそうです。(←これが彼の甘さを如実に表していますが)

検事に促されてワゴン車に乗り込み、それとすれ違うように地検が自宅に入って証拠品の押収を始めたのだそうですが、それを彼自身は見ていません。
残された息子が検察官と果敢に戦ったことなども彼は知らないし、それを話すことは辛すぎてわたしには出来ませんでした。

地検に連れていかれ、会社のパソコンのIDを聞かれて初めて、会社にも地検が入ったことを知り、数時間の追及ののち、地検で逮捕されたのだそうです。


逮捕されてすぐ、手錠腰縄姿で護送車に乗せられ、東京拘置所に移送されたのでした。
そこから取調べが連日朝10時から夜10時まで続けられ、逮捕後18日後に起訴されて接見禁止が解かれたのだそうです。

わたしが初めて拘置所に来たことを知った時には泣いた事、下着はすぐに着た事、着替えが差し入れられるまで二週間スーツで寝起きさたので擦り切れて破れたこと、いわゆる「臭い飯」が、最初は本当に臭く感じて食べられなかったこと。

支払いの期限がすぐだったので、ヒメがどうしたかと心配していたこと、思いもよらず弁護士が接見に来てくれ、号泣したことなどが書かれていました。


わたしには、それ以外に知りたかったことがありました。
まず一点は、わたしの存在そのものについてです。
地検の事情聴取が来るということを、わたしは覚悟していました。
彼の逮捕後、通勤の途中などにわたしを見つめる男性に気付くと、全員が検事なのではないかと怯えていました。
ですが、事情聴取はありませんでした。特捜ともあろうものが、恋人の存在に気付かない訳がない。
雇っていた女性に対しては事情聴取があったのに、わたしにはありませんでした。
その理由が知りたかったのです。
わたしの給料を当てにして時々彼が店の近くで待っていたときなど、尾行されていたのではないかと勘ぐってすらいたのです。

しかし、特捜はわたしの存在を知りませんでした。
知り合う以前に起こした横領ですから、関係ないと言えばもちろんそうですが、一番身近にいたのに。
特捜は、携帯とPCを見て初めてわたしの存在を知り、彼は「関係ない」と言い続けたため、聴取がなかったのです。

もうひとつは、
逮捕の日にちのことです。

アパートの鍵を借りる日の朝、彼は逮捕されてわたしの前から消えました。
それを友人Kに話したとき、「特捜だろ? 尾行してたに決まってる。で、隠れるって分かったからその朝踏み込んだんだろうよ。」と言われました。
わたしは友人を信頼しきっているので、てっきりそうだと思い、部屋を借りることを勧め、実行した自分を責めて悔やんで苦しんでいました。

部屋なんて借りたからその朝逮捕されたんだ…と…。

弁護士は「それは関係ないよ。」と言ってくれていましたが、それでもわたしは自責して苦しみ続けていました。

アパートを借りたことも、地検は把握していませんでした。
わたしの存在も。

逮捕から半年、やっとわたしから
2本の鎖が外されました。
自責の傷跡を心の奥深くに沈めました。

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