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「僕に頼りなさい。」

わたしにはもう一人、支えてくれている男性の存在がありました。
以前、生活に困っていた時に察して大金を貸してくれた人です。仮にNさんとします。
Nさんにはほとんど毎日メールをしていました。彼氏がいることも承知のうえ、わたしのメールに付き合ってくれました。

彼はわたしを好きでした。

わたしは、Nさんと会って飲んだり話したりすると楽しい反面、非常に逆撫でされることも多々あり、しょっちゅうケンカをしました。煮えくり返って怒りのメールを3通続けて送ったこともあります。

思えば、Nさんに対してだけは、いい子ぶらない、頑張り過ぎない、誰にも見せないむき出しの自分だったような感じがします。
彼がわたしを好きでいるのは充分知っていながら、わたしは彼を好きではなかったし、好きになってもらうためにいい子ぶる必要もないので、言いたい放題言っていたのです。
ずいぶんひどい言葉を投げつけたこともありました。
それでもNさんは、翌日またメールしてくるのです。
引くということをしない男性でした。


でも、彼氏が逮捕されたことは、言えませんでした。
顔見知りだからです。
なので、「彼氏の会社が潰れて、わたしは連帯保証人になっているために自己破産する」と説明し、その後は全く会うことなく数ヶ月が経過し、それでもなぜかメールだけはやりとりしていました。

町の産婦人科の待合室で時間つぶしにこっそり付き合ってもらったり、毎朝、通勤途中でメールをし、階段から落ちて足を痛めたこともありました。
Nさんがわたしに踏み込みすぎるあまりわたしがキレて、ケンカもしょっちゅうで、メールフィルターをかけて拒絶したことも数回ありました。


大学病院に行くまでの一週間の記憶はありません。ただ、もう立っていることも辛く、接客業に耐えられないかもしれないと弱気になって、売り上げはどん底でした。

事が思ったより重大だったため、わたしは刑務所の彼には事実を告げずに手紙を書いていました。もし摘出しても、彼が戻って来るまで黙っていよう…。戻って来たら、実はね、と話して泣かせてもらおう。
けなげにもわたしはそう思っていたのです。


実際は、恐怖と、生活の不安と、悲しみで心は乱れっぱなしでした。クリニックのドクターに聞いたところ、手術・入院は3週間、その後2ヶ月静養という目安でした。
手術代入院代はおろか、静養の間の家賃生活費はどうしたらいいのだろう…。
自己破産の時に保険は解約してしまっている。
もちろんどこからも借金はできない。


会のみんなに助けてもらうにも限度がある。50万という大金を出してもらったばっかりなのだ…。親には頼るどころか事実を話すことも避けたい…。

わたしはNさんにメールで病状を軽めに伝えました。感情は入れず、事実を話しました。
「力になろうか?」 Nさんはメールでそう言ってくれました。
「うん…どうしようもなかったら、お願いするかもしれない…。でも、お見舞いとかにこられたくはないの。」
「科が科だし行きませんよ! それより、どうしようもなかったらって、ほかにアテでもあるのですか?」
「…まだ、相談してないのでわかりません。」

しばらくしてNさんから一行のメールが届きました。


『僕に頼りなさい。』

携帯を握り締めてわたしはまたほろほろと泣きました。
抱きしめてくれる腕がほしい。思い切り泣ける胸が欲しい。

Nさんの一行は、わたしを素直にし、そしてわたしを弱くしました。

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