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ステップアップ

八月の下旬に、二度目の面会に静岡を訪れました。
本当に暑いところで、刑務所の房にも蚊が居ると彼は言っていました。
いじめられていないかと心配すると、また新しい入居者が入ってきたので皆の関心はそちらに移り、大したこと無くなったからと空元気で彼は答えました。

その週末、不審な着信が携帯にありました。
夜間ということもあり、出るか・出まいか迷った挙句、わたしは電話に出ました。
「○○と言いますが、キャラさん(←私)ですか?」男性はそう聞いて来ました。わたしは身構えました。○○という姓が、彼から搾取していたヤクザの名前と同じだったからです。
「そうですが、どちらさまですか!?」
「△△(←地名)の○○です。」
「だから、何なんですか、どなたなんですか、どうやってこの番号を、」
「保護司です。」

わたしのヒステリックな詰問を遮ってその人は言いました。
「保護司です。あなたは●●さんの身元引受人ですか? 私は彼を担当する保護司の○○です。」
ああ、早く言ってよ~。わたしはへたり込みました。
「失礼いたしました、そうですか、確かにわたしが身元引受人です。」
「いやあ、すみません、最初に言えばよかったんですが、拒否されることが多くてつい…。この地域を担当していて、彼の帰住予定地があなたの家になっているので、一応それが適しているか見に行って、面接しなければならないのですが…」
「はい、それについては存じております。ですが、今息子が昼間家に居ますので…。」
わたしがガラッと変えた口調でそう答えると、保護司はホッとしたように明るい声で話を始めました。
「普段私も仕事してますんで、次の日曜とかどうかなと思うんですが、家は中に入らなくてもまわりの環境を見せてもらえばいいです。どこかそこらへんでササッと10分ぐらい面談できますかね。」
ササッと済ませられるわけには行きませんでした。

保護司とは、法務省の保護監察官という役人の下で、実際に実務を行う民間の人です。
報酬はわずか月額数千円。ほぼボランティアです。こういう善意の人たちで、釈放された前科のある人たちが支えられているわけです。仮釈放されたあと、法務省に出向いて報告をし、次に保護司に会いに行き、それからでないと帰住地に帰れません。その後も満期を迎えるまでは毎月、保護司に面談に行って近況を報告する決まりがあります。
保護司は、住職・会社の社長・昔からの地主・もと教師、その他自営業の方が多いそうです。会社員の人には時間的にこなせない仕事でしょう。
その保護司が書類を書き、法務省に報告し、その報告書が仮釈放などに大きな影響を及ぼします。
ササッとではなく、充分にわたしの決意を聞いてもらい、理解してもらい、これなら大丈夫と太鼓判をもらわなくてはなりません。
家を見たあと、駅前の喫茶店に移って話がしたいと伝え、日曜に約束して電話を切りました。

出血は止まり、造血剤も欠かさず飲み、体調は僅かに保たれて来ました。
しかし一方では、クリニックを紹介してくれた仲間から執拗な介入を受け、心にストレスを溜め込んでもいました。
わたしは友人にSOSを発し、会ってもらう約束を取り付けました。

そして日曜、保護司が訪れました。彼と同じ歳の、柔和な小さな男性でした。

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